最新記事
米大統領選

「トランプ暗殺未遂」容疑者ラウスとクルックス、殺意以外の「唯一の共通点」とは?

Two Men Allegedly Tried to Kill Trump This Summer. Here's What to Know About Them

2024年9月18日(水)11時00分
ヘスス・メサニ

トーマス・クルックス容疑者について分かっていること

newsweekjp_20240918020128.jpg

トーマス・クルックス容疑者を追悼する男性 REUTERS

ペンシルベニア州のトーマス・クルックス(20)は7月13日、同州バトラーの集会で演説していたトランプを銃撃し、シークレットサービス(大統領警護隊)に射殺された。政治的背景はあまり一貫性がなく、まだ捜査で解明できていないことも多い。

ラウスがXでウクライナ支持を鮮明にし、トランプに対して募る反感を示すなどSNSで存在感を放っていたのとは対照的に、クルックスがSNSで活動していた形跡はほとんどなかった。右派のSNS「Gab」によれば、「バイデン大統領支持」の投稿に使われていたアカウントの持ち主はクルックスだった可能性がある。

米連邦捜査局(FBI)によると、クルックスにつながる別のSNSアカウントも見つかった。ここでは「反ユダヤ」のトピックが共有されていたといい、ネット上の限られたクルックスの足取りは「思想が入り混じった」状態だったとFBIは指摘する。

動機の解明は難航した。クルックスは共和党として有権者登録する一方で、アクトブルーにも寄付していた。クルックスの住所と一致するFECの記録によると、寄付はバイデン大統領の就任式当日の1回のみで、金額は15ドル。この寄付は、Progressive Turnout Project(本拠地シカゴ)の投票促進活動に充てられた。

クルックスは地元の介護施設で働いていて、採用の際の身元調査は問題なく通過した。ペンシルベニア州アレゲニーのコミュニティカレッジでエンジニアリングサイエンスの準学士号を取得して今年卒業したばかりだった。FBIによると、クルックスはトランプとバイデンの両方の集会をネットで検索しており、いずれかの候補に対する明らかな政治的動機というよりは、「偶発的な標的」として自宅近くで予定されていた集会に目を付けた可能性がある。

銃撃に至るまでの数日の間に、クルックスはバトラーの集会の場所のほか、民主党全国大会の日程と場所や、別の政治家に関する情報をネットで検索していた。銃撃の当日には集会場所の写真を検索し、襲撃に使った銃弾を購入した。

クルックスの車からは、簡易爆弾と防弾チョッキ、弾倉、ドローンが見つかった。2カ月たった今も正確な動機は不明だが、FBIは暗殺を狙った銃撃が失敗に終わったと見ている。米当局はクルックス単独の犯行だったと断定し、外国の介入や共謀の痕跡はなかったとしている。

捜査当局は9月16日、再びトランプの命が狙われた事件についても、これまでに調べた限りではラウス単独の犯行だったようだとメディアに語った。

(翻訳:鈴木聖子)

20250225issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年2月25日号(2月18日発売)は「ウクライナが停戦する日」特集。プーチンとゼレンスキーがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争は本当に終わるのか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中