最新記事
大統領選

「トランプは弱すぎた」「勝者はハリス」...それでもテレビ討論会は意味がなかった?

Donald Trump's 'Weak' Debate Leaves Key Question—Analyst

2024年9月12日(木)17時04分
ケイトリン・ルイス
討論会に参加したドナルド・トランプ前米大統領とカマラ・ハリス米副大統領

討論会に参加したドナルド・トランプ前米大統領とカマラ・ハリス米副大統領 HB/CLH/Reuters

<9月10日に行われたテレビ討論会ではハリス副大統領が「勝利」したとの見方が強いが、これで選挙の趨勢が決まったとは言えない。専門家たちの見解は――>

米大統領候補のカマラ・ハリス副大統領とドナルド・トランプ前大統領が、初めてのテレビ討論会を終えた。ハリスが優位に立ったように見えるが、彼女の力強いパフォーマンスが世論調査にどう反映されるかはまだ不透明だ。

9月10日夜にペンシルベニア州フィラデルフィアで行われた討論会では、ハリスが勝利したと多くの専門家は示唆しており、直後の世論調査もハリス有利に傾いている。

世論調査分析サイト「ファイブ・サーティエイト」によれば、米東部標準時11日午後1時の時点で、アメリカ国内でテレビ討論会を見た人の平均57%が、ハリスはトランプに勝ったと考えている。

この結果は、同サイトが3つの全国調査を集計したもので、トランプを勝者と考えた人は討論会を見た人の平均34%にすぎなかった。

おなじみの暴言を繰り返したトランプ

ハリスは討論会の序盤でトランプに暴言を吐かせることに成功した。トランプは質問への回答中に脱線し、民主党の中絶への対応や2020年大統領選挙の結果について、おなじみの誤った暴言を繰り返した。

米ケンタッキー大学の政治学教授D・スティーブン・ボスは本誌のメール取材に対し、ハリスはステージ上でトランプを怒らせるために「トランプをあまりからかう必要はなかった。トランプのパフォーマンスは最初から最後まで弱かった」と述べている。

「トランプはハリスに対してほとんど打撃を与えられず、討論が進むごとに自分の首を絞めていった」

ボスはさらに、討論会を通して「右派の有権者はトランプが何に言及しているかわかっただろう」が、トランプは「選挙の行方を左右する『普通の人』に話しかける方法を知らない」と分析する。

「もしトランプが今夜、大統領選挙への出馬を断念しないのであれば、討論会があまり重要ではないことを証明するだろう」

楽観的で前向きだったハリス

一方、討論会におけるハリスの重要な目標は、誰に投票するかを「決めかねている」有権者にアピールすることだった。米ミシガン大学のディベート責任者アーロン・カルは本誌のメール取材に対し、ハリスは有権者に自分の政策を紹介するという点で「全体的に良い仕事」をしたと評価している。

「ハリスの演説の全体的な基調は、より楽観的で前向きなものだった」とカルは指摘する。

「ハリスは、過去数回の政権下でアメリカを悩ませてきた政治的な敵意を一掃すると語った。支持者を決めていない有権者は一般的に、より楽観的なメッセージに惹かれる傾向がある。なぜなら、彼らは政治に深い関心がなく、ワシントンの政界で日々繰り広げられる政治的な策謀についてはよく知らないからだ」

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ大統領、イラン最高指導者との会談に前向き 

ワールド

EXCLUSIVE-ウクライナ和平案、米と欧州に溝

ビジネス

豊田織機が株式非公開化を検討、創業家が買収提案も=

ワールド

クリミアは「ロシアにとどまる」、トランプ氏が米誌に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 3
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは?【最新研究】
  • 4
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 8
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 9
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中