最新記事
ベトナム

家族と旅した楽園は「父が命懸けで戦った国」ベトナムはアメリカ人にとって特別な場所

An Unexpected Paradise

2024年9月5日(木)17時12分
ブレア・アンダーウッド(俳優)
家族と旅した楽園は「父が命懸けで戦った国」ベトナムはアメリカ人にとって特別な場所

クイニョンのビーチでくつろぐ筆者と妻ジョシー BLAIR UNDERWOOD

<「あれはベトナム戦争じゃない。私らはアメリカ戦争と呼んでいる」軍人の父から聞いた戦争の話とは違う、休暇で訪れたベトナムで気づかされた新たな歴史の視点>

たいていのアメリカ人は、ベトナムと聞けばあの戦争を思い出す。遠くのどこかにあって、たくさんのアメリカ人が戦い、死んでいった国。私自身、そう思っていた。

私の父フランク・アンダーウッド・シニアはベトナムで戦った。もう92歳になるが、まだ元気だ。それでも年を取ると感傷的になり、戦場で目にした地獄の光景や仲間の兵士、ベトナムの人々のことを思うと胸がいっぱいになると、よく語っていた。


すごく大変な戦争だった、とも言っていた。右も左も分からぬ異国の地のジャングルの中で戦うんだ、わしらアメリカ人には本当に苛酷な環境だったよ......。

私の家族の間では、ベトナムと言えば戦場だった。そのベトナムが今では人気の観光地。妙なものだと、私は常々思っていた。

今年6月24日に、私と妻ジョシーは結婚1周年を迎えた。妻には6人、私にも3人の連れ子がいるから大家族だ。

私は毎年夏になると、必ず子供を連れて外国旅行に出かけていた。再婚後もその習慣を続けたくて、今回はベトナムへ行くことにした。

それを告げたときの父の反応には驚いた。父は少し考え、こう言った。「あそこは美しい土地、熱帯の楽園だよ。戦争の霧を通して見ていたときは気付かなかったがね」

行く前はベトナムに何が期待できるか、全く分からなかった。でも、旅は最初から最後まで素晴らしかった。

中南部のリゾート地クイニョンでは、漁師と一緒に直径180センチほどの丸い籠船で海に出るという冒険を楽しんだ。いろいろなツアーに参加し、街や旧市街を歩き、買い物をした。

中部のホイアンでは旧市街の食べ歩きツアーに参加した。5カ所の屋台に立ち寄り、どこも味は最高だった。特に牛肉のフォーはよかった。

私たちはアナンタラ・ホイアン・ホテルに宿泊し、豪華列車でダナンからアナンタラ・クイニョン・ホテルまで6時間の旅をした。車内にはバーやマッサージ室があり、一流レストランがあった。全てが5つ星の体験だった。

現地の視点で学ぶ歴史

クイニョンのリゾートの支配人で、ベトナム在住10年のスウェーデン人エリックから聞いたところでは、私の父のようにベトナムで戦った元アメリカ兵が集まって暮らすコミュニティーもあるそうだ。若き日に兵士として戦った苦い記憶に区切りをつけたくて移り住んだ人が多いらしい。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中