派閥解消後の自民党総裁選、勝者が直面する「有事」の現実とは?
JAPAN’S BIG POLITICAL REALIGNMENT
政治資金規正法をどのように改革するか。政治資金の問題を超えて、もっと幅広い政治改革が必要なのかどうか。これらの点に関し、自民党議員の間で意見が割れていることは既に明らかだ。それだけではない。夫婦別姓や同性婚の可否といった社会・文化的な問題、気候変動・エネルギー政策(とりわけ原子力発電の将来)、アベノミクス後の日本の財政・金融政策などについても、相当な意見の隔たりがある。
財政について言えば、日銀による金利引き上げの是非、米ドルなどの主要通貨に対する円の適切な水準はどうあるべきか、金利上昇局面では短期的に財政規律を優先させるべきか、それとも大幅な財政赤字を今後も容認して成長を加速し、防衛費をGDPの2%に引き上げるなどの目標達成に突き進むか。
いずれも、決して小さな問題ではない。どれも日本が熾烈な国際経済競争に勝って繁栄を守り、急速に悪化する東アジアの安全保障環境にあって日本の安全を確保していく上で無視できない問題だ。
誰が総裁となるにせよ、党内にはこれらの重要課題について異なる見解を持つライバルが大勢いる。しかし党内の結束を維持できないようでは、党に対する国民の信頼を取り戻すことなど不可能だろう。
新総裁を待つ「毒まんじゅう」
自民党に対する国民の信頼を回復すべく有権者との対話を進めること。党内の亀裂を修復して自民党が効果的な政権運営を行えるようにすること。どちらの課題も、いま総裁選に名乗りを上げている人たちの手に余るかもしれない。
党内主流派の誰か(茂木敏充や上川陽子など)が選ばれれば党内の緊張を緩和できるかもしれないが、自民党の根本的な変化を国民に実感させることは難しい。国民的人気のある誰か(石破か小泉)が勝てば自民党の信頼回復にはつながりそうだが、党内からの反発は強いだろう。そうなると党を制御し切れず、効果的な政権運営は難しくなる。
現時点で最も勝ち目があるのは小泉だろう。国民へのアピール力があるし、菅義偉前首相のような党長老や同僚議員との関係もいい。とはいえ、若さと相対的な経験不足ゆえに苦戦する可能性はある。総裁選で負けた面々はいずれも潜在的なライバルであり、小泉が未熟さを露呈するのを待っているはずだ。
もちろん、そうした足の引っ張り合いは誰が勝ってもあり得る。だから今回の総裁選を経て誕生した首相が強固な信任を得て、安定した政権を築ける保証はどこにもない。