最新記事
感染症

今度のエムポックス(サル痘)は若年層の感染や性感染が増えている

Younger People More Vulnerable to Mpox, Warn Epidemiologists

2024年8月28日(水)18時57分
パンドラ・デワン
エムポックス

アフリカで感染が急拡大、WHOが世界に向けて公衆衛生上の緊急事態を宣言したエムポックス WHO

<今回の流行では以前より感染力の強い新しい型のウイルスが発生しており、とくに若年層が危険にさらされていると専門家は警鐘を鳴らしている>

アフリカで急速にエムポックス(サル痘)の感染が再拡大していることから、WHO(世界保健機関)は8月14日、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態を宣言した。とくに今回の感染拡大に関しては、専門家から、若年層がとくにエムポックスに感染しやすいという警告がなされている。

【動画】「エムポックス(サル痘)」の症状とは?

アフリカ疾病予防管理センター(CDC)によると、今年に入ってから少なくともアフリカの14カ国でエムポックス感染が報告されており、アフリカ大陸全体では2024年に入ってから1万7000件以上の感染疑い例が報告された。全症例および死者の96%以上がコンゴ民主共和国で発生しており、罹患者の多くは子供だった。

以前はサル痘として知られていたエムポックスは、2022年にアメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、その他多くの国々で発生し、世界的に注目された。このウイルスには、クレードIとクレードIIという2つの異なる系統があり、ヒト同士の密接な接触によって感染が広がる。

アメリカとヨーロッパで過去に発生した集団感染は、クレードII型によるもので、主に性的あるいは親密な接触によって広がり、男性同士の性交渉が最も感染リスクが高かった。

以前は、クレードIは性的接触では感染しないと考えられていた。しかし、現在ではクレード1bと呼ばれる新しい型が出現している。このタイプは従来の型よりも感染力が強いようだ。

セックスワーカーの感染も増加

「以前、クレード1bが性的接触によって容易に感染することは知られていなかった」と、コンゴ民主共和国国立生物医学研究所の疫学・グローバルヘルス部門長兼臨床研究センター長プラシデ・ムバラ・キンゲベニは記者会見で語った。「現在、流行しているクレード1bでは、セックスワーカーの感染が増えている。今回の感染拡大の主な感染様式として、性行為の増加が報告されている」

クレードIaとクレードIbのウイルスでは感染経路が異なるため、同じ国で2つの異なる感染拡大が同時に発生しているとキンゲベニは言う。

「クレードIaの感染拡大では、小児が多く罹患しており、この新しいクレードIbの場合は、青少年や成人の罹患が多い。私たちがクレードIbを恐れているのは、ヒトからヒトへの感染に非常によく適応していると思われるからだ」。

注目すべきは、ウイルスのこの二つの変種による感染が、若年層で著しく増えていることだ。専門家はこれが若者の免疫システムに関係しているのではないかと考えている。

「アフリカでエムポックスが流行する根本的な要因のひとつは、50年以上にわたってこの病気が放置されてきたこと、そして投資の不足と病気に対する対応能力の低さにあると思う」と、WHO国際保健規則緊急委員会のメンバーであるニジェール・デルタ大学のディミー・オゴイナ教授(感染症学)は、同記者会見で、エムポックスの感染者急増について語った。「だが、アフリカの人口が比較的若く、天然痘の予防接種の恩恵を受けていないことも、今回の感染拡大の生物学的理由のひとつと考えられる」。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    大麻は脳にどのような影響を及ぼすのか...? 高濃度の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中