中国による「傀儡ダライ・ラマ」誕生を阻止せよ
A CRUCIAL CHOICE
実際、亡命チベット人の大半が暮らすインドは、チベット文化の継承に協力している。対照的に、中国はチベットの文化・アイデンティティーの破壊に熱心だ。習近平(シー・チンピン)政権の誕生以来、そうした傾向が特に強い。
その一方、中国によるチベットの天然資源奪取は過熱状態で、幅広い範囲に影響が出ている。資源豊富なチベットは、世界人口の2割を超える人々の命を支える水の供給源であり、破壊の脅威にさらされる生物多様性ホットスポットの1つでもある。
中国の思惑をくじくには、アメリカとインドが力を合わせなければならない。アメリカは既に、20年12月に発効したチベット政策・支援法で「将来のダライ・ラマ15世の選定や教育、崇拝に関しては、文書による指示を含むダライ・ラマ14世の希望が決定的役割を果たすべきだ」としている。
だが、それだけでは足りない。バイデン米大統領は機会があるうちに、20年大統領選での公約どおり、ダライ・ラマと面会すべきだ。より広く言えば、600年以上も続く「ダライ・ラマ制度」を収奪しようとする習に対して、米印は多国間戦略を立てる必要がある。そのためには、後継者の認定ルールを明確に定めるよう、ダライ・ラマ本人を説得することが欠かせない。
ブラマ・チェラニ
BRAHMA CHELLANEY
インドにおける戦略研究・分析の第一人者。インド政策研究センター教授、ロバート・ボッシュ・アカデミー(ドイツ)研究員。『アジアン・ジャガーノート』『水と平和と戦争』など著書多数。
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