最新記事
ウクライナ情勢

黒海艦隊撃破の拠点になったズミイヌイ島(スネークアイランド)奪還の映像をウクライナが公開

Ukraine's Daring Liberation of Snake Island Revealed in New Headcam Footage

2024年7月2日(火)13時00分
エリー・クック

ロシア軍が撤退し、ウクライナ軍の黒海艦隊攻撃の拠点になったズミイヌイ島(2022年6月30日) EYEPRESS via Reuters Connect

<ロシアの侵攻開始直後に占領された同島を、ウクライナ軍はあっという間に奪還していた。2年を経て、作戦の様子が初めて明らかに>

ウクライナ保安庁(SBU)は30日、黒海の要衝である20をロシアから奪還した様子を捉えた動画を公開した。

【動画】ロシア黒海艦隊、水上ドローン攻撃に「なす術なし」...ヘリの機銃掃射を回避し「自爆攻撃」を成功させる緊迫シーン

SBUは30日、メッセージアプリのテレグラムに、ウクライナ軍とSBUは2022年6月にズミイヌイ島(英語名スネークアイランド)に対し「他に例のない非常に重要な作戦」を行ったと投稿した。

ロシア軍は2022年2月のウクライナ侵攻の開始直後にズミイヌイ島を襲った。ロシアの戦艦から降伏を求められた駐留ウクライナ軍部隊が、激しく抵抗したことは話題となった。

ズミイヌイ島周辺での両国の衝突は、同年6月にも報じられた。この時、ウクライナ側は島を奪還したと発表したのに対し、ロシア側は「善意」を示すために撤退するのだと主張した。

「ロシア軍はズミイヌイ島での任務を完了し、駐留していた守備隊を撤退させた」とロシア国防省の報道官は述べた。

30日に公開された動画では、ウクライナ側と見られる部隊がズミイヌイ島に接近し、発砲する様子が捉えられている。ボディカメラで撮影されたもので、兵士たちは島に上陸し、発砲しながら廃墟の間を抜けて前進していく。

本誌はこの動画が本物かどうか確認できなかった。

SBUによれば、ズミイヌイ島の奪還は「戦略的に重要だった。奪還して以降、黒海からの敵の段階的な撤退が始まった」としている。

ウクライナ国防省のキーロ・ブダノフ情報総局長はかつて、ズミイヌイ島は軍事的な理由からだけでなく、貿易や船舶の航行という点でも重要だと述べていた。

「この島を支配する者は、いつ何時でも、ウクライナから南に向かう船を妨害できる」し、ウクライナ西部を攻撃することもできるとブダノフは2022年5月、述べた。

黒海艦隊への猛攻の拠点

ズミイヌイ島はルーマニアに近い黒海の北西部に位置する。ここを起点にウクライナは、ロシアの黒海艦隊(クリミア半島西端にあるセバストポリに拠点がある)を脅かしてきた。

newsweekjp_20240702135251.jpg

赤いポイントがズミイヌイ島。ウクライナの主要な輸出港オデーサのすぐ南で、東のクリミア半島には黒海艦隊の拠点だったセバストポリがある。

報道によれば、セバストポリの軍事施設をウクライナ軍に破壊されたロシア軍は、黒海の東側にあるジョージアの新ロシア地域アブハジアに新たな軍事基地を作る計画だという。完成すれば、ロシアはこれまでよりウクライナ沿岸から離れた場所に艦船などを配置することができる。

欧米の情報機関の分析によれば、ロシアは黒海北西部における活動を抑えており、艦船をさらにクリミア半島を挟んでウクライナの東にあるノボロシースクの基地に移動させてきた。ウクライナ軍もこうしたロシアの基地や軍事施設に攻撃を仕掛けてきた。

「われわれはロシアの船舶をノボロシースク湾に事実上、閉じ込めてきた」とSBUのワシル・マリューク長官は5月に語っていた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ大統領、イラン最高指導者との会談に前向き 

ワールド

EXCLUSIVE-ウクライナ和平案、米と欧州に溝

ビジネス

豊田織機が株式非公開化を検討、創業家が買収提案も=

ワールド

クリミアは「ロシアにとどまる」、トランプ氏が米誌に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 3
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは?【最新研究】
  • 4
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 8
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 9
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中