最新記事
フランス

総選挙直前、仏政府が極右団体とイスラム系団体に解散命令

Extreme-right and radical Islamic groups banned in France

2024年6月27日(木)15時30分
リリス・フォスターコリンズ 
国民連合(RN)党首のバルデラ

極右・国民連合(RN)党首のバルデラ。前党首マリーヌ・ルペンの秘蔵っ子(6月25日、パリ) Baptiste Autissier / Panoramic via Reuters Connect

<来たるフランス議会選挙は、台頭する極右と国家の戦争だ>

フランス政府は、極右団体4つとイスラム協会1つに対して解散を命じた。この中には、暴力や反ユダヤ主義で知られる「連合防衛陣(GUD)」も含まれている。

【動画】訪中でレッドカーペットも高官の出迎えもなし、哀れなブリンケン米国務長官と仏マクロン大統領との差

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、ヨーロッパの複数の国で実施された欧州議会選挙で極右政党が躍進したことを受けて、国民議会(下院)の解散総選挙を発表。その第1回投票が6月30日に迫るなかで、今回の解散命令が出された。ある専門家は本誌に対して、欧州議会選での極右躍進はヨーロッパの顕著な右傾化を示唆していると指摘していた。


 

解散を命じられたそのほかの団体は、リヨンを拠点とする「Les Remparts(「城壁」の意)、「La Traboule」と「Top Sport Rhône」とイスラム協会の「Jonas Paris」だ。

ジェラルド・ダルマナン仏内相はX(旧ツイッター)への投稿で、「極端な憎悪とは国全体で戦わなければならない」と述べた。

現在はマリーヌ・ルペン率いる極右政党の国民連合(RN)が全ての世論調査でリードしており、マクロン率いる中道の与党連合は後れを取っている。ただし選挙は2回投票制で一部政党の選挙協力もあるため、結果は予測がきわめて困難な状況だ。

極右との選挙協力を訴えた党首を除名に

今回の選挙では、フランスがナチスの占領下にあった時代以降で初めて、極右の政府が選出される可能性がある。

国民連合のジョルダン・バルデラ党首は先日行われた討論会の中で、外国人に対する無償医療の廃止やフランス国籍取得の規制強化など物議を醸す政策を改めて表明した。

彼はまた、二重国籍者が国の一部要職に就くのを禁じることを提案。これを受けてガブリエル・アタル首相は、バルデラが排外主義的で人種差別的だと述べ、「二重国籍者は半人前の市民で、真のフランス国民ではないというメッセージを発信している」と強く非難した。

フランスでは右派の政治家も左派の政治家も、極右の台頭に懸念を募らせている。

保守派である共和党(LR)は2週間前に、選挙に向けて国民連合との協力を訴えた党首を除名した。

かつて共和党に所属していたダルマナンはこの動きを「共和党にとって不名誉なこと」と述べ、第二次世界大戦前夜にナチスドイツと結んだミュンヘン協定になぞらえた。

ダルマナンは6月24日にRTLラジオに対して、フランスの各当局は第1回投票を前に暴力が起きる可能性に備えていると述べ、「緊張がかなり高まる可能性がある」と指摘した。

ブリュノ・ルメール財務相はラジオネットワーク「フランス・アンフォ」に対して、「国内の平和」が心配だと述べた。「国民連合は安定と平和の源ではない。彼らは混乱と暴力の源だ」と彼は述べた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米国務長官、4月2─4日にブリュッセル訪問 NAT

ワールド

トランプ氏「フーシ派攻撃継続」、航行の脅威でなくな

ワールド

日中韓、米関税への共同対応で合意 中国国営メディア

ワールド

米を不公平に扱った国、関税を予期すべき=ホワイトハ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中