最新記事
研究

匂いの強い植物を体に塗り付けて「ハイになっている」インコ...「不思議な行動」の目的を解き明かす

Parrots Might Be Getting High Off Smelly Plants

2024年6月22日(土)15時13分
ジェス・トムソン
インコの不思議な行動を科学者が解明

Imogen Warren/Shutterstock

<抗菌・防虫効果があり、香りが強い化学物質ピペリンを含む木の枝や皮を、インコが自身の羽に塗り付けている様子が確認された>

オーストラリアに生息するインコが、「ハイになる」ために刺激性の植物を利用している可能性があるとする新たな論文が発表された。専門誌「オーストラル・エコロジー」に掲載された論文によれば、ノーフォークアオハシインコという緑色の鳥が、噛み砕いた植物を羽にこすりつけているのが目撃されたという。

■【動画】臭い植物を体にこすりつけて「ハイ」になっている...インコの「不思議な行動」

こうした行動を取る理由として、まず考えられるのは「寄生虫を駆除する」ことだろう。だが科学者らは、植物から放出される匂いでインコがハイになっている可能性も示唆している。

「毛づくろいをするノーフォークアオハシインコ数羽が観察・撮影され、1組のペアが、コショウの木の側枝と樹皮の小片を噛みちぎり、それを羽に塗りつける様子も映像に収められた」と研究者らは説明している。

コショウの木には、抗菌・防虫効果のある強い香りの化学物質ピペリンが含まれることから、研究者らは、インコがダニなどの寄生虫を撃退しようとしている可能性を示唆している。

「これは、鳥が植物の成分を体に塗っている珍しい例と見られ、吸血昆虫や外部寄生虫、内部寄生虫を撃退し、健康を向上させる方法だと考えられる」と研究者らは記している。

インコのような鳥も快楽を追求している?

興味深いことに、インコは植物の成分を体に塗るのを楽しんでいるように見える。論文の著者でオーストラリア国立大学のペニー・オルセン名誉教授(生態学・進化学)は、この行動は、「蟻浴(ぎよく)」という別の行動と同じように、強い匂いでハイになるための方法である可能性があると、ニュースメディア「カンバセーション」に掲載した論文で主張している。

蟻浴は何世紀も前から観察されており、鳥がアリに自分の体を這わせたり、アリを体に乗せたりする。するとアリは、防御のために蟻酸という化学物質を放出する。蟻酸には抗菌・防虫効果もある。

オルセンの論文によると、1931年にある博物学者が蟻浴について「蟻酸は特に心地よい効果があるに違いない」と指摘している。1957年にはアメリカの鳥類学者が、自身が研究していた鳥が、蟻浴から「性的刺激を含む官能的な快楽を得ているようだ」と結論づけている。

ただ当時、この見解はすぐに否定され、蟻浴は「完全に機能的なもの」とされた。「しかし、本当にそうなのだろうか」とオルセンは疑問を呈している。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 10
    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中