パレードの裏に思惑が...中国共産党がニューヨークでひそかに進める「工作」とは?
CHINA’S PARADE ANTICS
アダムズはこれまでの3回のパレード全てに参加し、在ニューヨーク中国総領事の黄屏(ホアン・ピン)と肩を並べて行進した。今年のパレードには黄のほか、アジア・太平洋諸国の外交官らが参加している。
果たしてアダムズは、パレードを企画したのが外国代理人登録法の下で登録された企業のCEOだったことを知っていたのか。本誌はニューヨーク市長室にこの点を問い合わせたが直接の返答はなく、広報担当者から次のようなメールが届いた。
「アジア・太平洋諸島系住民が全米で2番目に多い都市のトップとして、アダムズ市長はこの都市の豊かな文化に貢献するAAPI市民を祝福しています。私たちはニューヨーク市の多様なコミュニティーを体現する全ての文化をたたえます」
ムイは星島日報の親会社である星島新聞集団(本社・香港)が、外国のエージェントとして登録を強いられたのは不公平だと主張する。
「この新聞社で43年間働いてきたが、米政府とは何の問題もない」と、ムイは言う。だが21年に、親会社に新たな投資家が加わった。「米政府は彼が共産主義の中国出身だという理由で、当社に登録を義務付けた。選択の余地はなかった」
「全てを歓迎する」という嘘
ムイによれば、新たな投資家は深圳を拠点とする不動産企業の佳兆業集団の会長で、星島新聞集団の共同会長でもある郭英成(クオ・インチョン)だ。
彼と娘の郭曉婷(クオ・シアオティン)は、21年に星島新聞集団の株式28%超を取得。郭曉婷は親会社の共同CEOであると同時に、星島日報のアメリカ業務を統括している。
1年後には郭英成も郭曉婷も、保有株式の半分を香港の実業家カーソン・チョイ(蔡加赞)に売却したという。
同社の公式サイトや中国のメディアによれば、取締役7人のうち少なくとも5人は、中国共産党が進める影響力工作の「統一戦線」に関与する政治機関や社会組織に属している。
共同会長となったチョイは、中国人民政治協商会議のメンバー。取締役会の共同CEOであるジャーナリストの柴静(チャイ・チン)は、江蘇省人民政治協商会議のメンバー。そして郭英成は、統一戦線の組織である香港潮州商会の創設議長だ。
在ニューヨーク中国総領事館は公式サイトで公開している昨年のパレード報告書の中で、黄屏が人々に「団結を示し、憎しみや人種差別に抵抗し、尊重と友情、包括性と愛を共に推進してより良い未来を迎えるために立ち上がるよう呼びかけた」と書いている。