最新記事
ウクライナ情勢

アメリカ兵器でのロシア領内攻撃容認、プーチンの「最大最後の一線」を越えた?

Ukraine Is Closer to Crossing Putin's Biggest Red Line Yet

2024年6月5日(水)19時35分
ブレンダン・コール

ロシア外務省は5月、イギリスがウクライナに供与した兵器がロシア国内への攻撃に使用されれば、ロシアはウクライナ国内外のイギリスの軍事関連施設に対する攻撃で報復する、と述べた。

アメリカの外交政策における平和と外交を重視するアイゼンハワー・メディア・ネットワーク(EMN)のアソシエイト・ディレクター、マシュー・ホーは、ロシアのこの脅しはアメリカが供与した武器にも当てはまると述べた。


 

「NATOの偵察機や無人偵察機の撃墜、ウクライナに武器や物資を送ると報じられているNATOの兵站車両の破壊を意味するかもしれない」

フランスがウクライナに軍事教官を派遣するという憶測が流れたときは、この教官もロシア軍の「正当な攻撃目標」になる、とセルゲイ・ラブロフ外相なはっきり述べた。

元米海兵隊大尉のホーは、ウクライナでの戦争が拡大する危険性について今年3月に国連安全保障理事会(UNSC)で状況説明を行った。「非常に危険なのは、西側からの兵器が民間人の標的、例えばロシアの子供たちでいっぱいの学校の攻撃に使われることだ。ロシアはどう反応するだろうか」

そうでもない限り、「ロシアはウクライナ国外の西側諸国の軍事目標を攻撃するまでには至らないと思う」と、彼は言う。「ロシアがそのように戦争を拡大することを望んでいるとは思わない。そうした攻撃がもたらす恩恵は極めて小さいのに、リスクはあまりにも大きい」

すでに「一線」は越えた?

2023年10月、ロシアの独立系メディアAgentstvoによるロシア政府のメッセージの分析で、ロシア当局は同年9月、西側諸国とウクライナへの脅しとして「越えてはならない一線」や「意思決定中枢への攻撃」というフレーズの使用を実質的に止めたことがわかった。

セキュリティ会社グローバル・ガーディアンの主任情報アナリスト、ゼブ・フェイントゥッチは、2014年以来ロシアが占領しているクリミア半島の重要軍事拠点をウクライナが繰り返し攻撃して大きな損害を与えていることを指摘。「プーチンがクリミアを正式なロシア領とみなしていることからすれば、プーチンにとってはすでに一線を越えている」と述べた。

「同様に、ウクライナと国境を接するロシアの都市ベルゴロドやブリャンスク、クルスクなどの軍事施設も攻撃されているが、ロシアは何もできていない」

フェイントゥッチは、NATO各地で原因不明の火災が相次ぎ、ロシアの関与が非難されていることは、ロシアがどのような破壊工作を用意しているかを示している、と述べた。

「また、われわれはすでに、ロシアが戦術核兵器を使用するための訓練していることを知っている。ロシアがNATO諸国に対して、通常兵器で、しかもロシアの関与がわかるような方法で攻撃を加えることは考えにくい」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:「スウィフトノミクス」が幻想にすぎない訳

ワールド

焦点:少年院でギャングが勧誘、スウェーデンで増える

ビジネス

アングル:中国「白酒」が西側進出へ、メーカーは販売

ワールド

アングル:300%インフレのアルゼンチン、「主食」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:小池百合子の最終章
特集:小池百合子の最終章
2024年7月 2日号(6/25発売)

「大衆の敵」をつくり出し「ワンフレーズ」で局面を変える小池百合子の力の源泉と日和見政治の限界

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    キャサリン妃は「ロイヤルウェディング」で何を着たのか?...「お呼ばれドレス」5選
  • 3
    「地球温暖化を最も恐れているのは中国国民」と欧州機関の意識調査で明らかに...その3つの理由とは?
  • 4
    女性判事がナイトクラブで大暴れ! 胸が見えてもお構…
  • 5
    ウクライナ戦闘機、ロシア防空システムを「無効化」.…
  • 6
    ミラノ五輪狙う韓国女子フィギュアのイ・ヘイン、セク…
  • 7
    爆破され「瓦礫」と化したロシア国内のドローン基地.…
  • 8
    ガチ中華ってホントに美味しいの? 中国人の私はオス…
  • 9
    ロシアの人工衛星が軌道上で分解...多数の「宇宙ごみ…
  • 10
    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    爆破され「瓦礫」と化したロシア国内のドローン基地...2枚の衛星画像が示す「シャヘド136」発射拠点の被害規模
  • 3
    ミラノ五輪狙う韓国女子フィギュアのイ・ヘイン、セクハラ疑惑で3年間資格停止に反論「恋人同士だった」
  • 4
    ガチ中華ってホントに美味しいの? 中国人の私はオス…
  • 5
    「大丈夫」...アン王女の容態について、夫ローレンス…
  • 6
    衛星画像で発見された米海軍の極秘潜水艇「マンタレ…
  • 7
    貨物コンテナを蜂の巣のように改造した自爆ドローン…
  • 8
    キャサリン妃は「ロイヤルウェディング」で何を着た…
  • 9
    ロシア軍部隊を引き裂く無差別兵器...米軍供与のハイ…
  • 10
    「地球温暖化を最も恐れているのは中国国民」と欧州…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に
  • 3
    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア
  • 4
    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…
  • 5
    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…
  • 6
    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…
  • 7
    新型コロナ変異株「フラート」が感染拡大中...今夏は…
  • 8
    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…
  • 9
    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…
  • 10
    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中