NATO諸国、ウクライナ支援の方針転換でプーチンの警告を無視
アメリカは地対地ミサイルATACMSもウクライナに供与 U.S. ARMYーABACAPRESSーREUTERS
<プラハでの外相会合で、NATOがウクライナのロシア領内攻撃を容認>
NATO諸国がウクライナ支援でさらに一歩踏み込んだ、と言えそうだ。
5月31日、NATOはチェコの首都プラハで外相会合を開催。この場で主要国が続々と政策を転換させ、ウクライナが西側諸国から供与された兵器を使ってロシア領内の軍事目標を攻撃することを容認する方針を打ち出したのだ。ロシアのプーチン大統領がこの数日前、そうした方針転換は核戦争のリスクを高めると警告したばかりだった。
これまで欧米諸国の多くは、ウクライナのゼレンスキー大統領の要望を退け、ウクライナに兵器を供与する条件として、その兵器でロシア領内を攻撃しないよう制限を課してきた。とりわけバイデン米大統領は、ロシアとNATOの直接的な紛争──「第3次世界大戦」と呼んできた──を避けるために、兵器の用途に制約を課すべきだと主張していた。
しかし、バイデン政権は31日、ウクライナ政府に対して、同国北東部のハルキウ(ハリコフ)に近いロシア領内の軍事目標を攻撃するために米国製兵器を使用することを認めたと明らかにした。ロシア軍は最近、その一帯から国境を越えてハルキウ周辺に攻撃を行い、何十人ものウクライナ市民の命を奪っている。
この方針転換により、バイデンは米大統領として初めて、核兵器で武装した敵対国の領内に対する軍事行動を、限定的とはいえ認めたことになる。しかし米政府当局者たちは、長距離兵器でロシア領内を攻撃することは依然として認めていないと繰り返し強調している。
アメリカに続いてドイツも31日、ハルキウ周辺へのロシア軍の越境攻撃に対する自衛のために、ウクライナがドイツの供与した兵器を用いることを容認する方針を表明した。オランダ、フィンランド、ポーランドも、こうした方針を支持する姿勢を示している。
しかも、フランスのマクロン大統領は2月以来、欧米諸国の部隊のウクライナ派遣に関して「あらゆる選択肢を排除すべきでない」と主張し続けている。フランス政府は、ウクライナ兵を訓練するために訓練要員の兵士を派遣する計画についてウクライナ側との協議を進めている。
ロシア政府は、NATO諸国の方針転換を厳しく批判した。「アメリカの兵器によりロシア連邦を攻撃しようという企ては、アメリカがウクライナでの紛争に関与していることを実証している」と、ロシアのペスコフ大統領報道官は5月31日に述べている。