最新記事
少子化

日本の夫婦が生む子どもの数は70年代以降減っていない

2024年6月27日(木)14時40分
舞田敏彦(教育社会学者)

それはデータでも示せる。6歳未満の子がいる世帯の年収中央値を計算すると、2007年では528万円だったが、2022年では692万円にまで増えている(総務省『就業構造基本調査』)。東京に限ると650万円から946万円と、15年間にかけて300万円近くも増えている。47都道府県の数値を出し、3段階で塗分けた地図にすると<図1>のようになる。

newsweekjp_20240627025806.png

この15年間で地図の色が濃くなっている。2007年では年収中央値が500万円未満の県が多かったが、2022年では600万円を超える県が大半だ。国民全体が貧しくなっているのとは裏腹に、子育て世帯の年収は上がっている。今では、少ない年収では結婚・出産はおぼつかない。結婚・出産の階層的閉鎖性が強まっている。


少子化対策に当たって、子育て世帯の負担の緩和が重要であるのは確かだ。しかし、高いハードルを越えた「選ばれし層」だけを支援の対象にしては、効果は薄いと言うべきだろう。全国民から徴収する少子化支援金にしても、この部分だけに注がれるとしたら、持たざる者から持てる者へとお金を流してしまうことになる。

未婚者層をも含む、若者全体を支援の対象として見据えないといけない。増税もあり、今の若年層の可処分所得は減っていて(「この四半世紀でほぼ倍増した若年層の負担率」本サイト、2023年8月16日)、少なくなった手取りから、重みを増した消費税で日々の買い物をし、学生時代に借りた奨学金の返済もしている。結婚どころではない。

減税をして、彼らが自由に使えるお金を増やすことに重きを置くべきだ。人生のイベントアワーにある若年層の可処分所得を増やすことは、昨年に策定された「こども未来戦略」の基本理念として示されている。都知事選が近いが、この理念を施策として実行できる首長の誕生を望みたい。

<資料:厚労省『人口動態統計』
    総務省『就業構造基本調査』

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国は緩和政策を継続、債務水準は上昇=人民銀副総裁

ビジネス

ECB、銀行の流動性を注視 FRBと緊密に連携=監

ビジネス

ユーロ圏銀行融資、2月は一段と加速 利下げ寄与

ビジネス

英、自動車関税回避へ米と協議 「エスカレート望まず
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影された「謎の影」にSNS騒然...気になる正体は?
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 6
    地中海は昔、海ではなかった...広大な塩原を「海」に…
  • 7
    老化を遅らせる食事法...細胞を大掃除する「断続的フ…
  • 8
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 9
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 10
    反トランプ集会に異例の大観衆、民主党左派のヒロイ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 8
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 9
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 10
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中