なぜ「クアッド」はグダグダになってしまったのか?
A POTEMKIN ALLIANCE?
バイデン政権は最近、クアッドほどは中国に対して挑発的でない日米豪比の枠組み──通称「スクワッド」──を優先させているように見える。これは、アメリカと、もともとの同盟国であるオーストラリア、日本、フィリピンで構成される非公式のグループである。
しかし、インド抜きの「反中同盟」にどの程度の意味があるだろうか。今世紀に入って中国の人民解放軍部隊と本格的に対峙し双方に死傷者を出した唯一の国がインドなのだ。
実際、バイデンの中国歩み寄り路線は、これまでほとんど成果を上げていない。むしろ、中国は台湾への圧力を強めているし、南シナ海での挑発的な行動も激化させている。
アメリカがアプローチを改めない限り、中国の台湾攻撃やロシアとの関係強化を抑止することはできないだろう。ロシアのウクライナ侵攻を抑止できなかった二の舞いになる恐れがある。
インド太平洋地域の安全を維持するためには、クアッドに明確なミッションを持たせ、この枠組みの機能を強化する以外に道はない。バイデンやほかの3カ国の首脳は、この点をしっかり肝に銘じるべきだ。
それを怠れば、クアッドは実態を欠いた同盟になりかねない。「張り子のトラ」で中国を牽制することは不可能だ。
ブラマ・チェラニ
BRAHMA CHELLANEY
インドにおける戦略研究・分析の第一人者。インド政策研究センター教授、ロバート・ボッシュ・アカデミー(ドイツ)研究員。『アジアン・ジャガーノート』『水と平和と戦争』など著書多数。