最新記事
対中貿易

バイデン大統領、対中関税を大幅引き上げ EVや半導体など

2024年5月15日(水)10時29分
ロイター
バイデン

5月14日、 バイデン米大統領(写真)は電気自動車(EV)、半導体、医療用製品など中国からの輸入品に対する関税を大幅に引き上げると発表した。米カリフォルニア州ウッドサイドで2023年11月撮影(2024年 ロイター/Kevin Lamarque)

バイデン米大統領は14日、電気自動車(EV)、半導体、医療用製品など中国からの輸入品に対する関税を大幅に引き上げると発表した。

11月の大統領選を控え、米中対立のリスクを冒して有権者の支持拡大を図る。

 

バイデン大統領は「米国の労働者は競争が公正である限り、誰よりも働き、(競争相手などを)打ち負かすことができるが、あまりにも長期にわたり公正ではなかった」と述べた。

中国商務省は14日、米国の対中関税引き上げを受け、強い不満を示し自国の権利と利益を守るために断固とした措置を取ると表明した。

また、バイデン大統領はヤフーニュースのインタビューで、中国が対抗措置を講じる公算が大きいものの、「国際紛争などにつながるとは思わない」と語った。同時に、中国が「無関係の製品に対する関税を引き上げる方策を見い出そうとする可能性がある」という認識を示した。

米国は1974年通商法301条に基づき、今年、EVの関税を25%から100%に、リチウムイオンEV電池・その他電池部品の関税を7.5%から25%に、ソーラーパネル用太陽電池の関税を25%から50%に引き上げる。「一部の」重要鉱物についても関税をゼロから25%に引き上げる。

港湾クレーンの関税はゼロから25%に、注射器・注射針の関税はゼロから50%に、医療施設で使用する一部の個人用保護具(PPE)の関税もゼロから25%に引き上げる。

2025─26年には、半導体の関税を2倍の50%に引き上げるほか、黒鉛、永久磁石、ゴム製の医療用・手術用手袋の関税も引き上げる。

バイデン氏が以前発表した一部の鉄鋼・アルミニウム製品の関税引き上げも年内に発効する。

ホワイトハウスは声明で、中国の不公正な慣行により、世界の市場に安価な製品が氾濫しており、米国の「経済安全保障」に対する「容認できないリスク」になっていると表明。今回の措置は中国からの輸入品180億ドル相当が対象になると述べた。

トランプ前政権が導入した関税は維持する。国勢調査局によると、米国は昨年、中国から4270億ドルの製品を輸入。対中輸出は1480億ドルだった。

米国家経済会議(NEC)のブレイナード委員長は記者団に「中国は他国を犠牲にして自国の成長を促進するため、以前と同じ戦略を使っている。生産能力が過剰になっているにもかかわらず投資を続け、不公正な慣行で低価格に抑えた輸出品を世界の市場に氾濫させている」と述べた。

イエレン財務長官は、中国の過剰生産能力に対する米国の懸念は、先進国や新興国のパートナーとも広く共有されていると説明。この懸念は、不公正な経済慣行による経済の混乱を防ぎたいという意向に基づくもので、反中政策によるものではないとした。その上で、米国はマクロ経済の不均衡に関する懸念を中国に直接伝え続けていくと述べた。

ホワイトハウスは、トランプ前大統領が20年に中国との貿易交渉で合意を結んだが、米国の輸出や製造業の雇用は増えなかったと主張。トランプ氏が提案している全輸入品への一律10%の関税適用は同盟国の失望を招き、物価上昇にもつながるとしている。トランプ氏は中国製品については60%以上の関税適用を検討している。

アナリストは、貿易摩擦によりEV全般のコストが上昇し、バイデン政権が掲げる気候目標の達成や製造業の雇用創出に悪影響が出る恐れがあると警告している。

バイデン氏は中国との競争の時代に勝利を収めたいが、相互依存の関係にある米中経済に悪影響を及ぼす貿易戦争は起こしたくないと述べている。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20241126issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザでの戦争犯罪

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、予

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ発表 初の実戦使用

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッカーファンに...フセイン皇太子がインスタで披露
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 5
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 6
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中