最新記事
戦闘機

ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決するとき

Russian Su-57: How Stealth Jet Compares to Ukraine's Incoming F-16s

2024年5月22日(水)14時24分
ジーザス・メサ

モスクワ州ジューコフスキーの上空を飛ぶSu-57(2021年) Photo by Mihail Siergiejevicz / SOPA Imag/Sipa USA

<ウクライナがF16を手にする日がいよいよ近づいてきた。ロシアの最新鋭機Su57から制空権を取り戻せるか>

ウクライナは、西側支援国から供与されたF-16戦闘機が前線に届くのを待ちわびている。ウクライナは、2年以上にわたるロシアとの過酷な戦争を経て、「ファイティング・ファルコン」の愛称を持つこのアメリカ製戦闘機こそが、ロシアの航空優勢に対抗するカギになる、と期待をかけている。

【動画】究極の戦闘機F16と、トップガン・マーヴェリックのSU-57とのドッグファイト

数カ月におよぶ外交圧力の末、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はついに、北大西洋条約機構(NATO)加盟国のデンマーク、オランダ、ベルギーからF-16戦闘機の供与を受けた。アメリカと同盟国は協力し、4月はじめからウクライナ軍パイロットにF-16の操縦方法を訓練してきた。機体自体も、今後数週間のうちにウクライナに届けられるとみられている。ゼレンスキーは、ロシア軍と「同等の戦力」を実現するには、120〜130機のF-16が必要だと述べている。

 

ロシア側で迎え撃つ戦闘機はSu-57だ。F-16が信頼性と多用途性を備える一方、Su-57の高度なステルス性能は、手ごわい障壁となって立ちはだかるだろう。

Su-57は、ロシアの第5世代ジェット戦闘機であり、高度なステルス技術、3Dの推力偏向ノズルを備えたエンジン、そして幅広い兵器搭載能力を誇っている。

ロシアの軍事資料によれば、Su-57は、高度6万フィート近くの上空で「音速の2倍以上」の速度で飛行できる能力を持ち、航続距離は約2900キロを超える。

兵装としては、レーダー誘導、あるいは赤外線誘導(熱検知)の空対空ミサイル、無誘導の空対地ロケット、通常爆弾、クラスター爆弾、30ミリ口径で銃弾を発射する航空機関砲が搭載できる。

NATOのコードネームは「重罪犯」

2基のエンジンを持つこのステルス戦闘機は、ロシアの防衛産業大手スホーイ社によって、2000年代初頭に開発された。そのルーツは、冷戦時にまでさかのぼる。当時、ソビエトは新世代の戦闘機が必要だと判断した。「Su-27」や「MiG-29」からなる当時の航空部隊のあとを継ぎ、前線での戦術的な作戦を実行する役割を担う戦闘機だ。

だがSu-57は、製造の遅れや、性能面での問題に直面した。特に、エンジンとステルス性能については、問題が顕著だった。一部の軍用航空機専門家は、Su-57の丸いエンジンノズルは外から視認しやすく、レーダーによって検知される可能性が高いと指摘する。このため、ステルス性能が低下する。

このように性能面で物足りない点はあるものの、Su-57(NATOのコードネームでは、「重罪犯」を意味する「フェロン」)は、F-16より優れた点もいくつかある。防衛関連情報の専門誌「ナショナル・インタレスト」の報道によると、第5世代の「フェロン」は、地上レーダーとの連係が可能だという。これにより、第4世代と比べて、最初のミサイル発射が速いというアドバンテージがある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中