最新記事
ステルス対決

中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

Pentagon dismisses China's B-21 stealth bomber rival: Reports

2024年4月25日(木)16時18分
マイカ・マッカートニー
2016年に米空軍が公開したB21の完成予想イラスト

2016年に米空軍が公開したB21の完成予想イラスト REUTERS

<アメリカの最新鋭ステルス爆撃機B21には「遠く及ばない」との見解を示した>

中国が開発中のステルス爆撃機の性能は、アメリカの最新鋭ステルス爆撃機B21「レイダー」には遠く及ばない――米国防総省のある当局者がこう語った。

【動画】カリフォルニアで試験飛行中のB21の映像

この当局者は4月22日に、匿名を条件とした記者団との対話の中で、「中国初の戦略ステルス爆撃機H20のシステム設計を見ると、とくに「見えなさ(可観測性)」という点でアメリカのステルス爆撃機、とりわけ今後導入予定の最新鋭のステルス爆撃機には遠く及ばない」と述べた。

ステルス技術を搭載し、核兵器および通常兵器の両方を搭載可能なH20は、太平洋におけるパワーバランスを変える可能性がある。中国人民解放軍空軍の王偉副司令官は3月に、H20は「近いうちに」公開されると述べていた。

だが前述の米国防総省当局者は、H20の性能が期待されているほどのものかどうかは疑わしいとの見方を示す。「中国は自分たちが偉大な軍事大国であることを示したいというだけの理由から、H20を公開している可能性がある。H20の公開は必ずしも、彼らが必要とする種類の能力または数量を実際に確保したことを意味しない」

この当局者は、中国はアメリカのB21や旧型機のB2「スピリット」と同等のシステムを開発しようとしているものの「工学設計の面で多くの困難に直面」していることが分かっていると主張。だが中国が直面しているより大きな課題は、これらのシステムを「迅速かつ大規模に」運用できる有能な人材の不足■補足■だと述べた。

「ほぼ確実」な米中衝突への備えか

中国政府は2016年にH20(アナリストの間では「轟」の異名で呼ばれている)の開発に着手したことを発表して以降、その詳細を一切明らかにしてこなかった。

H20は最大積載量が45トンとされており、これはアメリカが保有するB2の20トン、B52「ストラトフォートレス」の35トンを上回る。航続距離は、グアム駐留米軍に脅威をもたらす約8500キロメートルから、ハワイも視野に入る約1万2000キロメートルと推定されている。

中国政府は、アジア太平洋地域で米軍と力を均衡させることができる「世界一流の」軍の設立を目指す習近平国家主席の計画に沿って着実に、人民解放軍の近代化を推し進めている。この軍備増強を受けて、アメリカは日本やフィリピン、オーストラリアをはじめとする地域の同盟諸国との安全保障協力を強化しており、これら同盟諸国は防衛能力の強化への投資を増やしている。

米軍の指導部は、中国との戦争は回避可能だと強調しているが、前述の米国防総省当局者は22日、習近平と中国共産党は米中の衝突について、アメリカ側が仕掛けてくる形で「ほぼ確実に」起こると考えていると述べた。

本誌はこの件について中国外務省に書面でコメントを求めたが、返答はなかった。

米大手国防企業ノースロップ・グラマンが開発した、核兵器を搭載可能のB21は深部攻撃向けに設計されており、電子戦能力が強化され、また敵のレーダーに映りにくい次世代ステルス技術が使用されている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

英中銀総裁、国債利回りのボラティリティー低下望む 

ワールド

ローマ教皇に両肺炎の初期症状、一段の治療必要=教皇

ワールド

中国、WTOでトランプ関税を非難 「一方的で世界貿

ワールド

中国、ウクライナ和平努力を支持 ガザは「交渉材料で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 2
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「20歳若返る」日常の習慣
  • 3
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防衛隊」を創設...地球にぶつかる確率は?
  • 4
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 5
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 6
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 7
    祝賀ムードのロシアも、トランプに「見捨てられた」…
  • 8
    ウクライナの永世中立国化が現実的かつ唯一の和平案だ
  • 9
    1月を最後に「戦場から消えた」北朝鮮兵たち...ロシ…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 2
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だった...スーパーエイジャーに学ぶ「長寿体質」
  • 3
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン...ロシア攻撃機「Su-25」の最期を捉えた映像をウクライナ軍が公開
  • 4
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    【徹底解説】米国際開発庁(USAID)とは? 設立背景…
  • 7
    週に75分の「早歩き」で寿命は2年延びる...スーパー…
  • 8
    イスラム×パンク──社会派コメディ『絶叫パンクス レ…
  • 9
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 10
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 9
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中