ハマステロ関与の国連組織への「資金拠出」再開へ...「ちょろすぎる」日本が見落とすガザ問題の根深さ
そしてUNRWAの1万3000人の職員のうち、2100人以上がハマスのメンバーだったと、この報告書は指摘する。UNRWAの実に17%がハマスのメンバーということになり、さらに、先に述べたイスラエル軍のハガリ海軍少将の指摘のように、2100人とは別の約480人が戦闘員だったという。
UNRWA本部もハマスの地下トンネル網に繋がっていた
しかもハマスの組織内でも要職に就いている者も多く、その多くが学校の校長などの表の顔をもっていたことが判明している。そんなことから、学校自体が、ハマスの地下トンネルの一部に繋がっていたケースもある。つまり、国連職員の顔をしながら学校を仕切り、学校自体をテロ組織の隠れ家や武器などを保管する倉庫のように使っていたと見られている。
UNRWAの本部自体も、ハマスの地下トンネル網に繋がっていた。そう考えると、UNRWAが何も知らなかったという言い訳は通らないだろう。そして一部の職員らを追放したところで、UNRWAには深くハマスのメンバーなどが浸透しているため、状況が変わるとは思えない。ガザでは過激派テロ組織が、非常に根深く国連の人道支援組織に浸透しているのである。
さらに筆者は、イスラエル政府が2011年と2012年に、UNRWAに提供した公式文書を入手した。そこには、UNRWAが当時の時点で雇っていたと判明していたハマスのメンバー10人以上の名前や個人情報が記載されている。
ところが、UNRWAは当時、この書簡に無視を決め込んで、何ら対処をしなかった。当時、きちんと対処していれば、2023年10月のテロや、その後のイスラエルによる報復攻撃も起きなかったかもしれない。つまり、多くの命が失われることを避けられたかもしれない。また多額の援助で行われていたガザ市民のための人道支援が武装勢力に悪用されることもなかっただろう。
岸田文雄首相や上川大臣がこうした現地の実態をどれだけ知らされているのかは不明だが、今のまま資金の拠出を再開するのはテロ組織を助長するだけだと言わざるを得ないだろう。ハマスに資金が流れ、また組織力を強化する可能性もある。それはアメリカ議会や、ガザ住民の苦境を非常に気にかけているバイデン大統領ですらわかっている。だからこそ、1年間の資金提供停止を決めたのである。
3月28日、スペイン軍は、ヨルダンやEU(欧州連合)の協力で、26トンの人道支援物資を投下した。実はアメリカやフランス、ドイツも、上空から人道支援物資の投下を行なっている。まだテロ組織に浸透されているという状況がどのように改善したのかはっきりとわからず、自浄作用が機能しているかどうかわからないUNRWAに資金を提供するよりも、別の手段でガザ市民を支援するほうがいいのではないだろうか。