エスカレートする中国の暴力──放水銃を浴びる船内映像をフィリピンが公開
China Water Cannon Attack Caught on Camera
フィリピンの補給戦に放水銃を浴びせる中国海警局の船(3月5日、南シナ海) REUTERS/Adrian Portugal
<フィリピン補給船をアメリカ海軍が警護するなど新たな圧力が必要、という専門家も>
中国海警局が、フィリピン船に高圧放水銃で攻撃する様子を一人称視点のカメラで捉えた新しい動画が公開された。このフィリピン船は、領有権が争われている南シナ海の前哨拠点に物資を補給するミッションの最中だった。
この動画は、フィリピンの「GMAインテグレーテッド・ニュース」が公開したもので、隠れるところを求めて一目散に走る船員たちが写ったのち、高圧で放たれた水の奔流が、手すりを越えて船室に入り込んでくる様子がわかる。水が通った跡には、破壊された船体の木片が、山となって残されている。放水の合間には、タガログ語で「止めろ......これはひどい!」と叫ぶ乗組員の声も聞こえる。
3月23日早朝、フィリピンの補給船ウザイマ・メイ4号は、沿岸警備隊の護衛船2隻を連れて、交代人員と物資を運ぶ途中だった。行き先は、セカンド・トーマス礁に座礁させ、今は軍の前哨拠点になっている古い戦艦だ。船隊が近づいたところを、中国海警局と、いわゆる「海上民兵」から妨害行為を受けた。
国際的に認められた領海
中国はセカンド・トーマス礁について、南シナ海の大半と同様、自国の領土だと主張しているが、実際にはこの礁は、国際的に認められたフィリピンの排他的経済圏(EEZ)内にある。
フィリピン政府が公開した動画には、中国海警局側が、高圧放水銃でウザイマ・メイ4号に執拗な攻撃を加えている様子が写っており、時には2方向から同時に攻撃されている場面もあった。フィリピン政府は、木造船のウザイマ・メイ4号はこの攻撃によって航行不能になり、乗組員にも複数のけが人が出たと述べた。
フィリピンのニュースチャンネル「ニュース5」が報じた別の映像は、船の外側から損傷の程度を写している。例えば、船体の木製パネルは明らかに損傷しているほか、一部には完全に剥ぎ取られてしまっている部分もある。
この船は航行不能の状態に陥ったが、セカンド・トーマス礁に駐留するフィリピン軍海兵隊員は、複合艇(船底を硬質素材で強化したゴムボート)を使って、運ばれてきた物資や新たに着任する人員を回収したと、フィリピン政府は述べている。
中国政府は、この岩礁におけるフィリピン側のプレゼンスは違法だと主張している。
フィリピンは1999年、この岩礁の領有権を主張するために、かつてアメリカ軍の戦車揚陸艦だった「BRPシエラ・マドレ」をここに座礁させた。この状況について、在米中国大使館の劉鵬宇報道官は本誌の取材に対し、「中国の領土主権の重大な侵害」だと非難した。
劉は、フィリピン政府はこれまで複数回にわたり、老朽化したシエラ・マドレの撤去を約束したと言う。「だが20年以上が過ぎた今も、フィリピンの戦艦はいまだにあそこに留まったままだ」