「衝撃的に劣悪」な性能...北朝鮮ミサイル、ウクライナでの「大失態」でロシアが調達キャンセルの情報
2023年9月に会談を行った金正恩とプーチン KCNA via REUTERS
<ロシアがウクライナの首都キーウなどに北朝鮮製「火星-11ナ」ミサイルを発射したものの、標的を大きく外れた地に着弾したという>
米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は25日、ロシアがウクライナに対して使用している北朝鮮製ミサイルは「衝撃的」なほど性能が劣悪であるとする、韓国の軍事専門家、イ・イルウ自主国防ネットワーク事務局長のインタビューを掲載した。
ウクライナ当局は、ロシアが自国に向け発射したミサイルの残骸を分析し、北朝鮮製の短距離弾道ミサイル「火星-11ナ」(KN-23)が使用されたと断定している。同ミサイルは、ロシア製「イスカンデル」の北朝鮮版として知られ、変則軌道を飛行することから迎撃が困難である可能性が指摘されてきた。
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イ事務局長は米国家安全保障会議(NSC)の資料を引用し、同ミサイルは昨年12月29日、ザポリージャ方面に対して初めて発射されたが撃墜され、1月2日と2月5日に東部の大都市ハルキウ、2月15日に首都キーウにそれぞれ1発が発射され、地面に着弾したことが確認されていると述べた。
5キロ以上離れた廃墟に着弾したNK-23ミサイル
同氏によれば、「まず1月2日の『火星-11ナ』はハルキウ市内に向けて発射されましたが、目標物と推定されていた工場建物の代わりに、アパートとアパートの間の広い空き地に落ちました。 2月5日、同じくハルキウ市内に発射された火星-11ナは、市内ではなく市内から5キロ以上離れた郊外農村の廃墟の建物に落ちた」という。
また、「2月15日にキーウに向けて発射された『火星-11ナ』もやはり都心ではなく北部の山林地帯に落ちて巨大なクレーターを作りました。弾着が確認された3発のうち2発がキロ単位の誤差が出たということは、事実上、目の見えないミサイルだという話ですが、これは最悪の命中率を嘲笑された旧ソ連の初期型スカッドミサイルにも劣る水準」だとしている。
(参考記事:【目撃談】北朝鮮ミサイル工場「1000人死亡」爆発事故の阿鼻叫喚)
ロシアはイランから大量のミサイルを輸入
同氏は北朝鮮製ミサイルがこうした劣悪な性能を見せた原因について、姿勢制御システムの劣悪さや、目標への軌道を維持する電子工学原点照準システムの欠如、またウクライナ軍によるジャミング(電波妨害)の可能性を挙げた。
同氏はさらに、ロシアが最近、イランから輸入を決めたとされる弾道ミサイル400発は、今後10か月近くにわたって使用できる量であり、これは北朝鮮からのミサイル調達がキャンセルされた可能性を示唆していると指摘。余ったミサイルが北朝鮮軍に引き渡され、韓国向けに配備されるなら「目の見えないミサイル、それも威力の強いミサイルが大量に配備されれば、それも恐ろしい状況だ」と述べている。
(参考記事:米軍機26機を撃墜した「北の戦闘機乗りたち」)
[筆者]
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト)
北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)、『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)、『北朝鮮ポップスの世界』(共著、花伝社)など。近著に『脱北者が明かす北朝鮮』(宝島社)。
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