ロシアが遂に使った(らしい)マッハ9の迎撃不能ミサイル「ツィルコン」の脅威
How Russia's Zircon Hypersonic Missiles Will Impact Ukraine War
ロシアは開発を始めたときから一貫してツィルコンの威力を喧伝してきた。それによれば、最高速度はマッハ9。マッハ1は時速約1225キロだから、その9倍の時速1万1000キロを超えるスピードで飛べることになり、迎撃は不可能だという。
ツィルコンは元々、極超音速の対艦ミサイルとして開発され、ロシアは2020年からフリゲート艦や潜水艦からの発射実験を行っていたと、米シンクタンク・ランド研究所の欧州支部の防衛安全保障アナリスト、マティアス・エケンは本誌に語った。
「ロシアはこのミサイルの運用を急いでいたので、早くも実戦配備し、使用した可能性があると聞いても、それほど驚かない」
しかしウクライナで初使用された可能性を過大評価すべきではないと、エケンは釘を刺す。「ロシアが国産の兵器システムを誇大宣伝するのは毎度のことだからだ」
ウクライナ側の発表によれば、ロシアが「無敵」と呼ぶもう1つの極超音速ミサイル「キンジャール」は、これまで何度もウクライナ軍に撃ち落とされた。
ウクライナの防空網は持つか
「ツィルコンが配備されれば、われわれは敵のあらゆる防衛システムを突破できると胸を張って言える」と、このミサイルを製造する戦術ミサイル公社の総帥であるボリス・オブノソフは今年1月ロシアの国営メディアに語った。だが西側の専門家はこの手の主張には懐疑的だ。
とはいえ、ウクライナ側が言うように、キンジャールはパトリオットで迎撃できたとしても、ツィルコンが実戦配備されれば、ウクライナの防空網を揺さぶる深刻な脅威になり得ると、英政府が14日に警告を発した。
今回ツィルコンが使用された可能性については、いくつか不明な点がある。黒海艦隊には今のところこのミサイルを搭載した船はほとんどないとみられているため、ロシア軍の支配地域の沿岸部から地上発射された可能性が高いと、英国防省はみている。地上発射型も開発されている模様だと、エケンも述べていた。
ロシアのアドミラル・ゴルシコフ級フリゲート艦の1号艦は既にツィルコンを搭載している。ロシアはこの艦を「大西洋、インド洋、さらには地中海を横断する長距離航海」に派遣したと、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は1月初め国営メディアに述べた。