2024年、中国による「台湾侵攻」はあるか?中国の行動を予測する2つのポイント
A PAPER TIGER
数々の不安材料と西側諸国の毅然とした姿勢により、習が台湾侵攻に踏み切るのは難しい XINHUA/AFLO
<中国大陸と香港ではどう猛なトラとなる中国だが、台湾との関係では力を行使できていない。軍事力・経済力ともに巨大化する中国が台湾併合に踏み切る条件は、どの程度整っているのか?>
今年、中国は1949年に共産党政権が誕生して以来最も強力に、台湾併合に向けて動くだろう。
習近平(シー・チンピン)体制の中国は、空前の経済力と軍事力を擁し、台湾併合という夢の実現に歴史上最も近づいている。
しかし、習も気付いているように、「歴史上最も近い」ことと「あと一歩」はイコールではない。
中国経済は根深い不安材料を抱えていて、軍の部隊や上層部の実力も疑わしい。
コロナ禍への対応をめぐり、習に対する国民の支持も大きく落ち込んでいる。
そして西側諸国の間では、中国による台湾への軍事攻撃は容認できないというコンセンサスが新たに形成されている。
もしそのような行動に出れば、中国にとって深刻な結果を招きかねないとのメッセージが発せられているのだ。
こうした点を考えると、今後の中国の行動に関して指摘できる重要な点が2つある。
第1に、中国は台湾侵攻を無期限に先延ばしせざるを得ない可能性が極めて高く、差し当たりは「平和的な浸透工作による統一」を目指すしかない。
第2は、中国が台湾を攻撃するとしても、その判断は自国の態勢と国際社会の反応によって決まる。台湾でどの政党が与党になるかも含めて、それ以外の要素はほとんど関係ない。
この点は、香港の経験を見ればよく分かる。
香港の民主派勢力の多数派は長年、独立を主張しなければ、厳しい弾圧はないと考えていた。ところが実際には、そうした勢力も、独立を主張していた勢力と同じように迫害を受けることになった。
要するに、中国にとって台湾侵攻に踏み切れる条件が整えば、台湾の与党がどの政党かに関係なく中国は侵攻する。
侵攻できる条件が整わなければ、侵攻はしない。現状では、中国は数々の問題を抱えていて、台湾を侵攻できる状況にないのだ。
これまで、中国の脅威は常に誇張されてきた。
台湾で独立志向の強い民主進歩党(民進党)が政権を握ると、中国は激しい言葉を浴びせ、通商政策で圧力をかけ、台湾周辺で軍事演習を行い、台湾を外交的に孤立させようとするなど、攻勢を強める。
だが、それ以上のことはできていない。
中国は民進党政権の台湾に大きな打撃を与えることも、それとは逆の立場を取る中国国民党(国民党)政権の台湾に大きな恩恵を与えることもできていない。
台湾経済は国民党の馬英九(マー・インチウ)前総統の時代より、民進党の蔡英文(ツァイ・インウェン)の総統就任以降のほうが明らかに堅調だ。
そう、強大な中国も全能の存在ではないのである。