「ルールなき世界」への転落を目前に、老人同士が座を争う「最後の機会」を見届ける...私たちは民主主義を救えるか?
ISSUES 2024: MAKING OR BREAKING DEMOCRACY
ILLUSTRATION FROM PROJECT SYNDICATE YEAR AHEAD 2024 MAGAZINE
<2024年米大統領選は、あまりにも長く権力にしがみつき、後継者を育てる役割を怠った世代の最後の争い。歴史を変えるには、我々の選択に結局は懸かっている。本誌「ISSUES 2024」特集より>
新しい年が来る。私たちはもう、いつ何が起きても驚かないが、この日付だけは覚えておき、心の準備をしておこう。11月5日、アメリカ大統領選の投票日だ。
その結果次第で、その日に至るプロセスの評価も、その後に続く日々の針路も変わる。
現職大統領のジョー・バイデンは、その経験と見識によって職業政治家の価値を再認識させたが、どうやらあと4年、80代半ばまでの続投に意欲を燃やしているようだ。
それが賢い選択なのかどうかは、彼と同世代の人々の間でも意見が分かれている。対抗馬は前大統領のドナルド・トランプになりそうだが、こちらも年齢はバイデンより3つほど若いだけ。
数え切れないほどの重罪で起訴されており、法的に確定した前回大統領選の結果を受け入れてもいないが、それでも共和党内の支持基盤は(少なくとも今のところ)盤石だ。
何とも退屈な選択肢だが、今度の選挙は史上まれにみる重要な意味を持つ。どちらが勝つか分からないし、敗者が素直に敗北を認める保証もない。そうなれば、アメリカは憲政の危機を迎える。世界各地の指導者の運命も、この選挙の結果次第だ。
もう2年近く国民の血を流し続けているウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、バイデンの勝利を切に祈っている。対するロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、同じくらい熱烈にトランプの勝利を願っている。
共和党がホワイトハウスに復帰すれば、プーチンがウクライナで勝てる可能性は高まるからだ。いずれにせよ、次の米大統領を待ち受ける世界では、クリミア半島やガザ地区だけでなく、あちこちで戦争の火の手が上がっていることだろう。
かつてささやかれた「アメリカの凋落」は、まだ始まっていない。アメリカは今も超大国で、突出した防衛力を誇り、広範な軍事同盟を率いている。台頭する中国をにらみ、冷え切っていた日韓両国の関係も修復させた。先端技術の流出を防ぐための中国包囲網も構築した。
それでも、同盟諸国にはアメリカを信用し切れない理由がある。覇権国家でありながら、腰砕けになることがあるからだ。
シリア内戦では、政権側による化学兵器の使用を阻止できなかった。アフガニスタンでは、あっさりとタリバンに政権を明け渡した。
中東でもアメリカの思いどおりにはいっていない。イスラエルとサウジアラビアの歴史的な和解と関係正常化を目指す交渉も、ハマスの奇襲で頓挫してしまった。
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