最新記事
中東

「アメリカの黒人として私はパレスチナと連帯する」対イスラエル戦争と黒人解放運動の意外な共通点

I Stand With Palestinians

2023年11月20日(月)12時06分
ルロン・バートン(著述家、講演家)
アメリカ黒人とパレスチナ

パレスチナ人の悲しみに強い共感を覚えたバートン COURTESY OF LERON L. BARTON

<なぜ、アメリカ黒人である筆者が、圧倒的な力によって抑圧される苦しみに共感し、パレスチナ人の戦いに「共闘」の意思を示すのか?>

世界中の人たちと同じように、私は今、イスラエルとイスラム組織ハマスの戦争にクギ付けになっている。

ハマスがユダヤ教の祝日にイスラエル南部を襲撃し、その報復として、イスラエルがハマスの拠点であるパレスチナ自治区ガザに猛烈な空爆を仕掛けたことから始まったこの戦争は、世界を賛否両論の渦に巻き込んでいる。

ソーシャルメディアには、反ユダヤ主義とイスラム嫌悪の両方があふれ返っている。とりわけ人種差別主義者たちは、ハマスの蛮行を理由に、パレスチナ人やイスラム教徒をテロリストと決め付けているようだ。2001年の米同時多発テロ後と同じだ。

アメリカの黒人として、私はパレスチナの人々の境遇に共感を覚える。だから彼らを応援している。

パレスチナの人々の苦難については、子供のときから見聞きする機会があった。よく祖父の隣に座ってニュースを見たものだ。すると、決まって家族の誰かが「かわいそうに。自分たちの土地を奪われてしまって」とつぶやいた。

やがて私は、著名な弁護士アラン・ダーショウィッツの著書『ケース・フォー・イスラエル──中東紛争の誤解と真実』(邦訳・ミルトス)やパレスチナ人学者の論文やインタビューを読みあさり、問題の全容を理解しようとした。

「まるでアメリカの黒人」

だが一番衝撃を受けたのは、パレスチナ人から直接聞く話だった。学校に行く途中で兵士に呼び止められたこと、これといった理由もなく逮捕されたり、暴力を振るわれたりしたこと。武器を隠しているのではないかと、自宅に踏み込まれたこと──。

「まるでアメリカの黒人みたいじゃないか」と私は思った。問題の性質は異なるが、私たちも理由もなく警察に車を止められ、所持品を調べられ、どこへ行くのか、何をしているのかと疑われ、肌の色だけで犯罪者のように扱われる。

実際、アフリカ系アメリカ人とパレスチナ人は連帯してきた歴史がある。黒人解放運動の指導者マルコムXは、1964年にガザを訪問して衝撃を受け、アフリカの指導者たちにパレスチナを支持するよう促す手紙を書いた。

60年代の黒人社会主義政党ブラック・パンサーも、パレスチナ人の闘争に支持を表明した。最近では2014年、ミズーリ州ファーガソンで丸腰の黒人青年が警察に射殺されたのをきっかけに大規模な抗議行動が起きたとき、パレスチナ人の若者が催涙ガスに耐える方法を伝授した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米電力消費、24・25年は過去最高更新へ=EIA

ビジネス

ソニーG、PS5の上位モデルを11月7日発売 11

ビジネス

米インフレ調整後の所得が増加、貧困率は変化小幅=国

ビジネス

銀行規制修正案、資本要件引き上げ水準緩和へ FRB
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
2024年9月17日/2024年9月24日号(9/10発売)

ユダヤ人とは何なのか? なぜ世界に離散したのか? 優秀な人材を輩出した理由は? ユダヤを知れば世界が分かる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    クルスク州「重要な補給路」がHIMARASのターゲットに...ロシアの浮橋が「跡形もなく」破壊される瞬間
  • 2
    非喫煙者も「喫煙所が足りない」と思っていた──喫煙所不足が招く「マナー違反」
  • 3
    アメリカの住宅がどんどん小さくなる謎
  • 4
    運河に浮かぶのは「人間の手」? 通報を受けた警官…
  • 5
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレ…
  • 6
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンシ…
  • 7
    【クイズ】世界で最も競技人口が多いスポーツは?
  • 8
    トランプの勝利確率は6割超、世論調査では見えない「…
  • 9
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 10
    川底から発見された「エイリアンの頭」の謎...ネット…
  • 1
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレイグの新髪型が賛否両論...イメチェンの理由は?
  • 2
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン」がロシア陣地を襲う衝撃シーン
  • 3
    国立西洋美術館『モネ 睡蓮のとき』 鑑賞チケット5組10名様プレゼント
  • 4
    【現地観戦】「中国代表は警察に通報すべき」「10元…
  • 5
    「令和の米騒動」その真相...「不作のほうが売上高が…
  • 6
    エルサレムで発見された2700年前の「守護精霊印章」.…
  • 7
    「私ならその車を売る」「燃やすなら今」修理から戻…
  • 8
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 9
    メーガン妃の投資先が「貧困ポルノ」と批判される...…
  • 10
    世界最低レベルの出生率に悩む韓国...フィリピンから…
  • 1
    ウクライナの越境攻撃で大混乱か...クルスク州でロシア軍が誤って「味方に爆撃」した決定的瞬間
  • 2
    寿命が延びる「簡単な秘訣」を研究者が明かす【最新研究】
  • 3
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 4
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 5
    ハッチから侵入...ウクライナのFPVドローンがロシア…
  • 6
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 7
    日本とは全然違う...フランスで「制服」導入も学生は…
  • 8
    「棺桶みたい...」客室乗務員がフライト中に眠る「秘…
  • 9
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレ…
  • 10
    ウクライナ軍のクルスク侵攻はロシアの罠か
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中