死に絶える中東和平...ハマスとイスラエルの衝突の先にある「最悪のシナリオ」
イスラエル軍の報道官ダニエル・ハガリは9日、ハマスの攻撃への対応として、30万人に及ぶ予備役を召集したと発表。集落は奪還したが、散発的な衝突は続いているとし、テレビ放送された記者会見で同氏は「ガザ周辺のすべての地域で捜索を徹底的に行い、パレスチナの戦闘員を一掃する」と語った。
アメリカのバイデン政権は空母「ジェラルド・R・フォード」を地中海東部に派遣し、イスラエル支持の姿勢を示した。
イスラエルへの攻撃を計画したガザ地区内外のハマス高官がこれほどの成功を予想していたかは分からないが、誰が先頭に立って決定を下したかはある程度の確度で推測できる。ヤヒヤ・シンワールであれ、ムハンマド・アルデイフであれ、あるいはマルワン・イッサであれ、運動の中心人物たちは、これがハマスとガザ地区にとって痛ましい代償を伴うことを知っていたはずだ。
一方でイスラエル軍も7日以来、包囲したガザ地区への激しく無差別な爆撃をエスカレートさせている。
パレスチナのマイ・アルカイラ保健相は声明の中で、イスラエル軍がガザ地区で病院や救急車を「意図的に」爆撃し、医療従事者を殺傷したとして非難し、直ちに行動を起こすよう国際社会に訴えた。医療従事者を標的にすることについて、同氏は「国際法および規範に対する重大かつ明白な違反だ」と指摘した。
イスラエルにとっても難しい決断
間もなくガザ地区への地上侵攻を始めようとしているイスラエルだが、地上戦についてはジレンマがある。ガザ地区には230万人以上が住んでおり、世界で最も人口密度の高い場所の一つだ。そこで地上戦をすれば、多くのイスラエル軍兵士が死傷、あるいは捕虜になる可能性がある。このことから地上侵攻に踏み切るのは、ネタニヤフにとっても容易ではなかったはずだ。この点はイスラエル国内の報道でも指摘されており、ネタニヤフとその顧問団は決定を下すことを恐れていたという。
しかし、地上戦を避けることは、次なる攻撃や戦争を招く「弱さ」を露呈することにもなりかねない。
7日に公開された米誌フォーリン・アフェアーズの分析では、ネタニヤフにとれる選択として次の3つが示された。第一にパレスチナ人の抵抗勢力に立ち向かい阻止すること、第二にハマスや他の勢力のさらなる侵入を阻止すること、そして第三にガザ地区から発射されるロケット弾や砲弾を何としても止めることだ。ただし、これらの目標の実行は至難の業だとしている。
現在アメリカと一部の西側諸国はイスラエルを支持しているものの、ガザ地区での民間人に対する攻撃に抗議する声は世界中から上がっており、その「支持」は揺らぎ、一層圧力がかかるだろう。