最新記事
キャッシュレス

キャッシュレスに消極的...もっぱら「現金派」のドイツ人、背景には驚くべき理由が

“Only Cash Is True”

2023年9月28日(木)14時00分
アンチャル・ボーラ(フォーリン・ポリシー誌コラムニスト)

デジタルユーロへの不安

現金払いを抑制する規制は、ドイツでは政治的に不人気と見なされている。ドイツの人々は専門家も含め、折り畳んだユーロ札をポケットや財布に入れて持ち歩くことに何の不便さも感じていない。

だがデジタルユーロを導入すれば、現金の製造・保管・輸送コストを削減できる。複数の銀行が仲介する電子決済と異なり、金融仲介機関に縛られることはなく、銀行口座すら必要なくなる。デジタルユーロは「デジタル化された世界において、中央銀行発行通貨に現金と並ぶアクセス性と使いやすさ」を保証するものだと、バルツは言う。

「現在、ECB(欧州中央銀行)はデジタルユーロに関する2年間の調査フェーズを終えつつあり、(ECBの)政策理事会が今年秋に決定を下せば、次の準備フェーズに移行する可能性がある」

少なくとも一部の民間銀行は、デジタルユーロの決済は追跡可能であり、マネーロンダリング防止に役立つ可能性もあるが、個人のプライバシーが何らかの形で侵害されることは避けられないとみている。さらに金融機関への預金が減少し、銀行の融資能力に影響が出る恐れもある。

モノとサービスのオンライン購入は17年の6%から、コロナ禍中の昨年には24%まで上昇したが、今のところパンデミックもデジタル化も、ドイツ人から見た現金の魅力と快適さを消し去ってはいない。ドイツの銀行業界はカード決済の年率2%成長と、現金払いの同3%減少を予測しているが、それでも30年の時点でドイツ人は全取引の少なくとも30%を現金に頼り続けることになる。

From Foreign Policy Magazine

20250121issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年1月21日号(1月15日発売)は「トランプ新政権ガイド」特集。1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響を読む


※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中