中国の見せる「夢」から、途上国が醒めはじめた...グローバルサウスの新リーダーはインドか?
VYING FOR LEADERSHIP
世界の3大水路を押さえる
こうして西側の太平洋外交が混乱するなか、中国は太平洋島嶼国をやすやすと口説き落とした。キリバス、トンガ、バヌアツなど大半は小さな貧しい国で、賄賂を織り交ぜた中国のわずかな金が大きな効果を発揮している。ソロモン諸島は今年7月に中国と警察協力協定を締結しており、今後は中国の海軍基地を受け入れるかもしれない。
30年足らずの間に、中国は柔軟な手法を用いながらグローバルサウスで高い支持を集めてきた。中南米のボリビアやキューバ、ベネズエラなど、反米主義やマルクス主義的な傾向のある政権には、中国共産党中央対外連絡部の要員を送り込んでいる。
中国にとって、グローバルサウスへの投資がもたらす地政学的な見返りは大きい。なかでも重要なのは、香港の企業を通じてパナマ運河両端の港の管理権を確保したこと、アフリカ東部ジブチに海軍基地を開設したこと、そして、マラッカ海峡の西の入り口にあるミャンマー領の大ココ島に軍事施設を建設したことだ。南シナ海の人工島に既に設置している軍事施設と合わせて、中国は世界3大水路の戦略的難所で通航妨害を行えるようになった。
さらに、100以上の途上国が、習近平(シー・チンピン)国家主席の「一帯一路」構想の覚書に署名。一帯一路は潤沢な資金を提供する投資・融資プラットフォームであり、グローバルサウスへの浸透を図る主要な手段である。
ただし、中国の勢いはいくつかの理由で弱まりつつつある。まず、南シナ海での攻撃性は沿岸諸国を警戒させ、平和的台頭という主張が偽りであることを証明している。中国の海洋帝国主義の犠牲になったフィリピンは、中国との実りなき盟約を捨ててアメリカ陣営に復帰した。
さらに、国家が支配する目標主導で投資と輸出に偏重した経済は、機能していない。最近の債務危機とパンデミックからの回復の失敗は、今後の見通しも厳しいことを物語る。
その結果、一帯一路のインフラプロジェクトで中国政府からの資金が枯渇し始めている。また、グローバルサウス、特にアフリカは、中華思想が人種差別と表裏一体であることに気付くようになった。
そして、西側と中国は互いに敵視を強めており、途上国は巻き込まれることを警戒している。ブラジルとインドは、BRICSの拡大が、中国による世界経済秩序の破壊を手助けしていると不満を見せている。