タイ、帰国後収監されたタクシン元首相に仮釈放の可能性 シナリオ通りとの批判で反政府運動の危機も

今後のタイ政界の鍵を握るタクシン元首相 ATHIT PERAWONGMETHA - REUTERS
<新首相が決まったのもつかの間、政情不安化に向かうのか?>
5月の総選挙から紆余曲折を経てようやく新首相、閣僚が決まったタイでは帰国したタクシン・チナワット元首相(74)の処遇が最大の焦点となっている。そのタクシン元首相は帰国後禁固8年で収監されたものの、国王の恩赦で1年に減刑され、そしてさらに保釈で早期釈放の可能性が出てきた。こうした一連の動きが報道されると「最初からそのシナリオができていたのではないか」「政権との出来レース」などという憶測が飛び交う事態になっている。
タクシン元首相を支持するタイ貢献党は自党の実業家セター・タビシン氏を新首相候補として擁立し、親軍派や保守派の支持を取り付けた多数派工作でセター氏を新首相に選出した。
この国会での首相選出に合わせ、タクシン元首相は 8月22日に「海外逃亡先」の中東からシンガポール経由でバンコクに15年ぶりに帰国を果たした。在任中の汚職などによる禁固8年の実刑が課されていたタクシン元首相は直ちに刑務所に収監された。
しかしタクシン元首相は心臓や肺の疾患、高血圧による体調不良を訴えて同日深夜には医療設備の整った警察施設の特別病棟に移送され、そこで加療を受けながらの服役となった。
さらに9月1日にはワチラロンコン国王による恩赦で刑は8年から1年へと大幅に減刑され、その結果1年後の釈放が現実問題となっていた。
こうした動きをタイ貢献党関係者やタイ東北部の農民、貧困層などの熱心なタクシン元首相支持派はおおいに歓迎し、早期釈放で政界復帰への期待が高まっていた。
弁護士が仮釈放に言及
こうしたなか、タクシン元首相の弁護士が元首相の健康状態を理由に「早期の仮釈放を申請する可能性」に言及したのだ。
タイの法律によれば仮釈放の条件は刑期の3分の1を経過していることとされている。このためタクシン元首相は現在の禁固1年の3分の1である4カ月が経過した時点で仮釈放が申請できることになる。このため早ければ2024年1月にも仮釈放の申請手続きが可能となり、申請が認められれば仮とはいえ釈放されることとなるという。
ただ健康状態が仮釈放申請の理由となるため、仮釈放後は医療機関での治療が必要となる見通しで、直ちに政治活動を再開はできないとの観測が有力だ。
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