中国の出稼ぎ労働者「農民工」のスト多発でも、習政権には単なる「頭痛のタネ」程度...その理由は?
China’s Restless Workers
出稼ぎ労働者の不満がさらに高まっても、個別の要求を掲げた小規模な散発的ストにとどまり、社会全体を揺さぶる大きなうねりにはならないだろう。とはいえ中国全土、さらには全世界の注目を引く争議も起こり得る。
現に昨年11月、河南省鄭州にあるフォックスコン(鴻海科技集団)傘下のアップルの受託生産工場では、賃金未払いや新型コロナの厳格な感染防止策に抗議する大規模なストが発生。
iPhoneの製造ラインが停止する騒ぎとなり、アップルがサプライチェーンを見直すきっかけになったとも言われている。
この騒ぎに続いて、11月末には中国当局のゼロコロナ政策に抗議して、何も書かれていない紙を掲げてデモを行う「白紙」運動が各地に広がった。
中国では異例のことだが、この運動では市民の抗議が実質的な成果につながった。当局はデモ参加者の大量逮捕に乗り出しつつも、ゼロコロナ緩和に舵を切ったのだ。
しかし、鄭州の騒動や、それ以前の自然発生的な抗議活動も、中国政府が労働法や出稼ぎ労働者の労働条件を見直す動きには至らなかった。
一方で、グローバル企業はサプライチェーンを中国から分散させる傾向を強めている。これにより、中国の製造企業に対する世界的な需要はさらに落ち込み、中国の労使関係に強力な間接的影響を及ぼすだろう。
米中間の地政学的緊張は、こうした傾向に拍車をかけている。人件費の高騰や、中国のゼロコロナ政策がもたらした世界的混乱などの逆風も、中国のビジネス環境に対する外国企業の信頼を低下させている。
共産党の正当性が消える
多国籍企業が中国での操業を放棄することはないだろう。少なくとも中国国内での生産は、外国製品を求める中国の巨大な消費者市場に供給するために必要である。ただし、新型コロナ以前から、世界の工場としての中国の役割は低下し始めていた。
外国企業が進めるサプライチェーンの多様化は、中国の製造部門の生産能力過剰をさらに深刻な事態に追い込み、今年後半には製造業全体でさらなる賃下げや人員削減を招く可能性が高い。