最新記事
ワグネル

プリゴジン蜂起の真の理由はワグネル愛。ワグネル解体の回避もまだ諦めていない?

Prigozhin Speaks for First Time Since Deal With Putin

2023年6月27日(火)18時43分
トーマス・キカ

ワグネルが占拠したロストフのロシア軍南部軍管区司令部で話すプリゴジン(6月24日) Press service of "Concord"REUTERS

<7月1日をもってワグネルを廃止してロシア国防省に統合することは断固拒否しているし、仲介役のベラルーシ大統領も解体以外の方法があると言ったというが>

ロシアのオリガルヒ(新興財閥)で民間軍事会社ワグネルの創設者エフゲニー・プリゴジンは6月26日、ロシア政府に対する武装蜂起を唐突に終わらせた後、初めてコメントを発表した。

プリゴジンは23日、自らが率いる部隊に対し、ロシア国防省に戦いを挑むよう呼びかけた。ウクライナに駐留していたワグネルの部隊をロシア正規軍が攻撃し、多くの戦闘員を死に至らしめたと主張してのことだ。ワグネルは、ロシア南西部ロストフ・ナ・ドヌにあるロシア軍の拠点を制圧したと発表したのち、首都モスクワを目指して北上を始めた。

一部では、未遂に終わったクーデター、あるいは武力による反乱とも表現されている今回の武装蜂起は、プリゴジンが25日、隣国ベラルーシの仲介による和解提案を受け入れたと報道されて、急転直下で終結した。この合意の一環として、ワグネルの部隊は、安全を保証されるのと引き換えに、反乱を中止することになった。また、プリゴジン自身もロシアを離れ、ベラルーシに居住することで合意したという。

プリゴジンは26日、武装蜂起の失敗以来初めて沈黙を破り、自身の公式テレグラムチャンネルに、一連の音声メッセージを投稿した。これらの音声クリップの中でプリゴジンは、自身の部隊について、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を標的にしたり、政権転覆を目指していたわけではなかったと強調した。

ウクライナ侵攻、自分なら成功していた

BBCニュースによるこの音声クリップの翻訳によれば、「我々は、ロシア指導部を転覆するために進軍したわけではない」とプリゴジンは述べている。「進軍の目的は、ワグネルの解体を回避することと、プロ意識に欠ける行動によって膨大な数の過ちを犯してきた上層部の責任を問うことにあった」

プリゴジンはさらに、ワグネルは合意内容のうち、「2023年7月1日をもってワグネルを廃止し、(ロシア)国防省に統合する」ことを目的とする部分については「断固として」拒否すると主張した。プリゴジンによれば、ワグネルの指揮官たちは、国防省との契約受け入れを拒否しているという。

プリゴジンはさらに、武装蜂起を終わらせる合意に際して、ベラルーシの独裁者アレクサンドル・ルカシェンコ大統領が関与したことを認め、同大統領が「手を差し伸べ、ワグネルがその活動を合法的に継続するための方法を提案してくれた」と述べた。

プリゴジンはまた、音声クリップの中で、ロシア正規軍への批判を繰り返した。短期間で終わったワグネルの武装蜂起は、「ロシア全土における深刻な安全保障上の問題」を露呈させたと述べ、自身の部隊が最初の攻撃を遂行していたなら、ウクライナ侵攻はもっと成功していたはずだと主張した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシアがウクライナに無人機攻撃、1人死亡 エネ施設

ワールド

中国軍が東シナ海で実弾射撃訓練、空母も参加 台湾に

ビジネス

再送-EQT、日本の不動産部門責任者にKJRM幹部

ビジネス

独プラント・設備受注、2月は前年比+8% 予想外の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中