諦めか「古典的防御策」か? 補給ルートを自ら断つ、ロシアの意図不明な「巨大ダム破壊」の謎
Is Putin Giving Up Crimea?
クリミアは重要な戦利品
防衛問題情報サイト「SOFREP」のガイ・マッカードル副編集長は、カホフカ・ダム爆破はロシアとウクライナの「双方にとって打撃になる」と分析する。
「(ダムの破壊で)クリミアをはじめ、ウクライナ南部にあるロシア占領地域への水の供給が断たれることになる可能性が高い。洪水によってロシアの防衛拠点とクリミアへの補給ルートが損なわれる可能性も高い」と、マッカードルは言う。
「しかもこのダムは、ドニプロ川の横断を可能にする最後のルートの1つでもあった」
米海兵隊の元大佐で、現在は米戦略国際問題研究所(CSIS)の上級顧問を務めるマーク・キャンシアンは、ロシアがクリミア半島を断念したとは考えていない。
「ダム爆破は、プーチンがウクライナを諦めた兆候ではあり得ない。クリミアはとてつもなく大きな『戦利品』だから、どんな代償を払っても手放さないだろう」と、キャンシアンは本誌に語った。
「ロシアがダムを爆破したのは、ウクライナ軍がドニプロ川を越えて攻撃してくる可能性に備えて、『水の防壁』を拡大するためだろう。これまでも頻繁に用いられてきた古典的な防御策だ」
かつてアナリストらは、こう語っていた。クリミアを失えば、ロシアにおけるプーチンの正統性は大きく損なわれる。そしてプーチンが失脚する可能性さえ生じる、と。