最新記事
ウクライナ情勢

攻撃ヘリKa-52撃墜でも変わらないロシア軍の航空優位

Ukraine Downs Russian Helicopters After Armor Losses

2023年6月21日(水)17時34分
デービッド・ブレナン

テスト飛行中のロシア軍の攻撃ヘリ、Ka-52「アリゲーター」(ロシア南部のロストフ州) Sergey Pivovarov-REUTERS

<ウクライナ軍は1週間で敵の攻撃ヘリ6機を破壊したが、それぐらいではロシアの航空戦力の脅威は変わらない>

<動画>ロシア塹壕の近接戦 *閲覧注意

この1週間、ウクライナ軍が破壊したロシア軍のヘリコプターの数が増加している。ウクライナ軍は今、約1300キロの前線に沿った複数の地点において、長く続いた防御から攻撃に移る困難でコストのかさむ転換を進めている。

ウクライナ軍は、ロシア軍に与えた人員と装備の損失を毎日集計しており、この1週間でロシア軍のヘリコプター6機を破壊したと報告している。

ウクライナ軍が破壊したヘリコプターの数の増加は、ウクライナ軍の反転攻勢でロシア軍の装備と人員の損失が急増したのと軌を一にしている。ウクライナ軍は6月に入り、要衝バフムトを中心とするドネツク州南東部とザポリージャ州南東部への大規模な攻撃を始めたのだ。

落としたヘリコプターの一部は、戦場上空にいたロシアの攻撃ヘリコプター、なかでもKa-52「アリゲーター」だと考えられている。西側にとっては歓迎すべきことだ。反攻の初期には、西側がウクライナに供与されたドイツの主力戦車レオパルト2やアメリカの歩兵戦闘車ブラッドレーを失った。こうした損失の少なくとも一部は、ロシアの攻撃ヘリコプター、特にKa-52によるものと考えられるからだ。

基地にはさらに20機のヘリが

ロシア軍は侵攻開始後、多くのKa-52を失っている。オランダに拠点を置くオープンソース情報防衛分析サイトのオリックスによれば、2022年2月以降、35機が破壊、放棄、鹵獲されたと報告している。ロシアが開戦前に用意していたKa-52は約100機とされるので大きな損失だ。

だが、戦いを生き延びたKa-52は、ウクライナの反攻を食い止めるうえで重要な役割を果たしている。ロシア占領下にあるウクライナ南東部のベルジャーンシク空港を撮影した衛星画像を見ると、ここ数週間でさらに20機の新しいヘリコプターが到着した。その中には、5機のKa-52、攻撃ヘリコプターMi-24「ハインド」、海軍のヘリコプターが含まれている。

これらロシアの航空戦力は、ウクライナ侵攻後も全体として比較的ダメージが少なくて済んでおり、ウクライナ軍がロシアの3重の防衛線の深くに進むにつれて、大きな脅威になるだろう。

ウクライナ当局も、日々この問題を強調している。ボロディミル・ゼレンスキー大統領は6月中旬、ロシアの「航空と砲撃における優位性」を認め、ハンナ・マリャル国防次官は、「敵の航空と砲撃における優位性」によって増幅された「極めて激しい戦闘」だ、と報告している。

(翻訳:ガリレオ)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ大統領、イラン最高指導者との会談に前向き 

ワールド

EXCLUSIVE-ウクライナ和平案、米と欧州に溝

ビジネス

豊田織機が株式非公開化を検討、創業家が買収提案も=

ワールド

クリミアは「ロシアにとどまる」、トランプ氏が米誌に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 3
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは?【最新研究】
  • 4
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 8
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 9
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中