それでもエルドアンを愛し続ける──国父が掲げた「ナショナリズム」は今も健在
Erdogan as “One of Us”
「世論調査は間違いだ」
ヤウズの息子たちは困難な時期に生まれた。トルコでは2011~17年、クルド労働者党(PKK)や過激派組織「イスラム国」(IS)によるテロ攻撃が続発。「安全保障が政府の主要課題の1つだ」と、ヤウズは言う。
離婚経験者で理容師の彼は黒のスニーカーに灰色のジーンズ、黒のレザージャケット姿で、ひげはきれいに整えている。今どき、どこにでもいる男性の格好だ。片手に祈禱用ビーズを持っているのは、単なる習慣だという。
一緒にいた友人は同じサッカーチームを応援しているが、支持する政党は違う。それも問題ではない。世論調査は間違っていたという点で、2人の意見は一致している。
「最も大きな声が、トルコの一般市民の声とは限らない」。ヤウズはそう語るが、故国が分断していることは認める。
「私たちの大統領を独裁的指導者と見なし、変化を求める人々がいる。私自身は、実行力があり、勤勉で力強い大統領だと考えている。彼は私たちの仲間だ。この国を前進させようとしている」
もっとも、ヤウズが営む理髪店は停滞気味だ。新型コロナのパンデミックと生活費の危機の二重苦で、苦境が続く。
ウクライナでの戦争も、何の得にもなっていない。問題があるのは欧州も同じだと、ヤウズは主張する。彼の友人は黙ったまま、首を横に振る。それから2人は、新しく入れたお茶を分け合った。