「トランプがプーチンにすり寄るのはとうてい支持できない」 共和党支持のウクライナ系米国人、大統領選で苦渋の選択へ
「争点は1つ」
選挙に向けたサイクルは始まったばかりだ。だがウクライナ系米国人の活動家の多くは、議員らに対してウクライナ支援を求める働きかけを前例がないほど進めている、と語る。また民主党の中には、ウクライナ情勢に対する共和党の態度につけ込んで票を獲得しようとする動きもある。
先月末には、62のウクライナ支援団体が大人数で議事堂に詰めかけ、ウクライナによる抵抗を支援するさまざまな法案に賛成するよう議員に陳情を行った。
民主党候補者を支援する主要な政治資金団体「アメリカン・ブリッジ」内の議論に詳しい人物によれば、同団体では、一部の選挙区のウクライナ系米国人をターゲットとして、ウクライナ侵攻に対する共和党大統領候補の姿勢を強調する意見広告を打つことを検討しているという。
複数の団体・個人の連携組織として侵攻開始後にウクライナ支援のため結成されたミシガン州の「ウクライナ・米国危機対応委員会」で共同代表を務めるエミリー・ルトコウスキー氏は、デトロイト都市圏の会員向けに投票ガイドを作成している。
このガイドは、ウクライナに関する候補者の見解に基づいて投票先を提案するものになる。
ルトコウスキー氏はウクライナ侵攻について、「多くのウクライナ系の人にとって、今回の選挙の争点はこれ1つに絞られる」と話す。
ウクライナ系米国人の投票パターンについてはほとんどデータがないが、ロイターが取材したコミュニティー有力者や有権者、ストラテジストらによれば、このグループはソ連共産主義をめぐるネガティブな体験ゆえに、伝統的に共和党を支持してきたという。20世紀の大半を通じて、共和党はソ連に関して対決色の強い姿勢を採用していたし、同党の多くは引き続き自由市場経済の恩恵を強調している。
世論調査によれば、ロシア系米国人の圧倒的多数はプーチン大統領によるウクライナ侵攻に反対している。ロシア系米国人コミュニティーからの支援を受けてきたウクライナ系米国人の啓発活動家は、ロシア系米国人がこうした姿勢を取るのは、1つには米国では独立したメディアに触れることができるからだとしている。
デサンティス氏の「愚かな発言」
ペンシルベニア州選出のワイルド下院議員がウクライナ系米国人の中でも特に親しく接しているのは、アレンタウンにあるウクライナ正教セントメリー教会のリチャード・ジェンドラス司祭だ。
ジェンドラス司祭は礼拝の中で政治を語ることには慎重だが、教区民との会話から判断すれば、過去の選挙でトランプ氏を支持した人の多くが、現在では同氏を見限ることを考慮しているようだと話している。
ジェンドラス司祭によれば、3月、ウクライナ侵攻についてデサンティス氏が「領土紛争」と表現した直後、地元のウクライナ系聖職者らとの会合があったという。
「彼らは『何と愚かな発言だろう』『どうしてあんなことが言えたのか』と言っていた」とジェンドラス司祭。「ウクライナ系米国人の間では、あの発言は紛れもない侮辱だと感じられた」
インタビューに応じた人の中には、予備選では、ウクライナ支援に積極的な共和党の弱小候補に投票するつもりだ、という声もある。
カーボン郡のストーニチジさんは、元ニュージャージー州知事のクリス・クリスティー氏が気に入っていると言う。友人のマイケル・サチウさんは、マイク・ペンス前副大統領がいいと言う。2人ともまだ大統領選への出馬を宣言していないが、考慮中であることは公言している。
クリスティー氏もペンス氏も、一貫してウクライナ支援を口にしている。
「(予備選で)トランプ氏が勝っても、私が投票することはない」とウクライナ生まれのサチウさんは言う。「この地域の多くの人は同じように感じている」
Gram Slattery(翻訳:エァクレーレン)
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