プーチンと戦うもうひとつの手段 ......ノルウェーの「空飛ぶ病院」がウクライナの負傷兵を救護!
「空飛ぶ病院」が記録的スピードで負傷者救護 Youtube
<医療機関が十分に活動できないウクライナから、多くの負傷者を収容。EU域内など高度な体制の整う施設へ搬送し、命をつないでいる>
傷ついたウクライナの兵士を救うため、ノルウェーのスカンジナビア航空(SAS)機による航空医療搬送(メディバック;メディカル・エバキュエーション)が行われている。ウクライナ国外の病院へ移送しながら、同時に手当を施すことが可能だ。
同社が所有するボーイング737小型ジェット旅客機を改装したもので、「フライング・ホスピタル」の愛称で呼ばれる。内部には通常の座席列の代わりに、2段式の治療用ベッドが複数設置されている。民間の乗員によって運航され、医療スタッフが同乗し飛行中の治療・看護に当たる。ノルウェーとEUが共同で事業を実施しており、これまでに約2000人の負傷者を救護した。
AFP通信は「空飛ぶ病院」として同機を取り上げている。
前例ない規模の搬送体制、「記録的な速さ」で確立
同機は、一度に最大20人の負傷兵を収容・輸送する。担架サイズの簡易的な病床のほか、人工呼吸器や輸血装置、血圧や酸素飽和度などを読み取るバイタルサインモニターなどが備わる。ノルウェー軍の医療部隊に所属するホーコン・アサック中尉は、AFPに対し、「空中を飛ぶ小さなICU(集中治療室)のようなものです」と例えている。
EUの緊急対応調整センター(ERCC)に務めるフアン・エスカランテ氏は、AFPの取材に応じ、「ウクライナからの要請を受け、この枠組みを立ち上げました......ウクライナの病院の負荷を軽減する目的があります」と説明している。大陸レベルでの航空医療搬送としては前例のないものだったが、「記録的なスピードで」実施に移されたという。
記事によると、ある輸送では、ウクライナから70キロの地点にあるポーランドのジェシュフ・ジャションカ空港でウクライナの負傷兵を収容した。治療を続けながら2日間をかけて飛行し、アムステルダム、コペンハーゲン、ベルリン、ケルン、そして最終目的地であるノルウェーのオスロまで負傷者をそれぞれ送り届けたという。
負傷者の救護は、ヨーロッパがロシアに対し、武器を使わず対抗する手段でもある。スペインのマルガリータ・ロブレス国防相は昨年、ウクライナの人々を収容する北東部サラゴサの軍事病院を訪れた際、治療は「プーチンと戦うもうひとつの手段です」と語っている。