最新記事
ロシア

ロシアで重要な軍事パレード中止、披露する戦車が足りない?

Russia May Have Canceled Victory Parades Due to Humiliating Tank Shortage

2023年4月12日(水)15時08分
ブレンダン・コール

戦意高揚にも重要なはずの軍事パレードだが(2022年5月9日、Maxim Shemetov-REUTERS)

<ロシアで最も重要な祝日である5月9日戦勝記念日のパレードが一部の州で中止になった。表向きは安全上の理由だが、実はパレードで披露する戦車や兵器などが足りないのではないかと噂されている>

ロシアの2つの州の知事は、戦勝記念日の軍事パレードを中止すると発表した。安全保障上の問題を理由に挙げているが、ウクライナ戦争によって軍の装備が不足していることが原因だとも言われている。

5月9日は第2次世界大戦で旧ソビエトがナチス・ドイツに勝利したことを祝う重要な祝日で、ロシアと旧ソビエト連邦の一部でパレードが行われる。ウラジーミル・プーチン大統領は、「ナチズムとの戦い」をウクライナ侵攻の大義名分に掲げてきた。

戦勝記念日で最も有名な行事は、モスクワの赤の広場で行われるパレードだ。兵士が行進し、兵器や軍の装備品が披露されるこのイベントは、ウクライナに対する本格的な侵攻の最中ということもあり、ロシアの軍事力を大々的に誇示する機会として特に意義が深い。

しかし、ウクライナと国境を接するクルスク州とベルゴロド州の知事は、恒例の地元での軍事パレードの中止を発表した。

クルスク州のロマン・スタロボイト知事は、州都クルスク市のパレードは「安全上の理由から」開催しないと述べたと、ニュースメディアRBCが報じた。

一方、ベルゴロド州のヴャチェスラフ・グラドコフ知事は、同州の州都の中心部に「多数の車両や兵士が集まって敵を刺激する事態を避けるために」パレードを行わないと述べたと、ロシアのテレグラムチャンネル「ASTRA」は伝えている。

披露できるものが足りない?

だが、ウクライナ戦争に関する最新情報を提供するツイッターユーザー、テンダーは、今回の決定の理由は、「単に道路に上がって走行できる状態の戦車が足りないためだ」と記している。

「ロシアの戦車はすべて前線で必要とされ、残りの車両はすべて大都市のパレードで必要とされている」と、16万7000人のフォロワーをもつテンダーはコメントした。現に昨年はモスクワでの戦勝パレードと同時に開催されるはずだった航空ショーも中止され、当局は悪天候を理由にしていたことを指摘した。

ウクライナ戦争についてツイートしているマリア・ドルツカも、両州のパレード中止決定について推測し、こう書いている。「T-34戦車(第二次大戦で使われた古い戦車)以外にパレードで見せるものがなくなったから?それとも、これ以上の資金集めはしたくない、ということか。他に理由はあるのか?」

本誌は、クルスクとベルゴロドの両知事に連絡を取り、コメントを求めている。

戦争が始まって以来、ベルゴロドやクルスクといったウクライナと国境を接するロシアの州は、ウクライナが定期的にロケット弾やドローンで軍事施設に攻撃を仕掛けていると訴えている。

試写会
カンヌ国際映画祭受賞作『聖なるイチジクの種』独占試写会 50名様ご招待
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中