ロシアで重要な軍事パレード中止、披露する戦車が足りない?
Russia May Have Canceled Victory Parades Due to Humiliating Tank Shortage
戦意高揚にも重要なはずの軍事パレードだが(2022年5月9日、Maxim Shemetov-REUTERS)
<ロシアで最も重要な祝日である5月9日戦勝記念日のパレードが一部の州で中止になった。表向きは安全上の理由だが、実はパレードで披露する戦車や兵器などが足りないのではないかと噂されている>
ロシアの2つの州の知事は、戦勝記念日の軍事パレードを中止すると発表した。安全保障上の問題を理由に挙げているが、ウクライナ戦争によって軍の装備が不足していることが原因だとも言われている。
5月9日は第2次世界大戦で旧ソビエトがナチス・ドイツに勝利したことを祝う重要な祝日で、ロシアと旧ソビエト連邦の一部でパレードが行われる。ウラジーミル・プーチン大統領は、「ナチズムとの戦い」をウクライナ侵攻の大義名分に掲げてきた。
戦勝記念日で最も有名な行事は、モスクワの赤の広場で行われるパレードだ。兵士が行進し、兵器や軍の装備品が披露されるこのイベントは、ウクライナに対する本格的な侵攻の最中ということもあり、ロシアの軍事力を大々的に誇示する機会として特に意義が深い。
しかし、ウクライナと国境を接するクルスク州とベルゴロド州の知事は、恒例の地元での軍事パレードの中止を発表した。
クルスク州のロマン・スタロボイト知事は、州都クルスク市のパレードは「安全上の理由から」開催しないと述べたと、ニュースメディアRBCが報じた。
一方、ベルゴロド州のヴャチェスラフ・グラドコフ知事は、同州の州都の中心部に「多数の車両や兵士が集まって敵を刺激する事態を避けるために」パレードを行わないと述べたと、ロシアのテレグラムチャンネル「ASTRA」は伝えている。
披露できるものが足りない?
だが、ウクライナ戦争に関する最新情報を提供するツイッターユーザー、テンダーは、今回の決定の理由は、「単に道路に上がって走行できる状態の戦車が足りないためだ」と記している。
「ロシアの戦車はすべて前線で必要とされ、残りの車両はすべて大都市のパレードで必要とされている」と、16万7000人のフォロワーをもつテンダーはコメントした。現に昨年はモスクワでの戦勝パレードと同時に開催されるはずだった航空ショーも中止され、当局は悪天候を理由にしていたことを指摘した。
ウクライナ戦争についてツイートしているマリア・ドルツカも、両州のパレード中止決定について推測し、こう書いている。「T-34戦車(第二次大戦で使われた古い戦車)以外にパレードで見せるものがなくなったから?それとも、これ以上の資金集めはしたくない、ということか。他に理由はあるのか?」
本誌は、クルスクとベルゴロドの両知事に連絡を取り、コメントを求めている。
戦争が始まって以来、ベルゴロドやクルスクといったウクライナと国境を接するロシアの州は、ウクライナが定期的にロケット弾やドローンで軍事施設に攻撃を仕掛けていると訴えている。