米下院議長、台湾の蔡英文総統と会談 軍事・経済の協力強化を表明、中国は反発
マッカーシー米下院議長(共和党、写真中央)は5日、台湾の蔡英文総統(写真左)と米カリフォルニア州ロサンゼルス近郊のロナルド・レーガン大統領図書館で会談を行った。(2023年 ロイター/David Swanson)
マッカーシー米下院議長(共和党)は5日、台湾の蔡英文総統と米カリフォルニア州ロサンゼルス近郊のロナルド・レーガン大統領図書館で会談を行った。
台湾総統が米国で下院議長と会談するのは、1979年の断交後初めてとなる。中国側は会談を行えば報復すると表明していた。
蔡氏は民主主義が脅かされた際に台湾に寄り添ってくれた米議会に謝意を示した上で、マッカーシー氏および他の共和・民主両党議員に「平和を守るためには強くなければならない」との信念を伝えたほか、会談後には「われわれは一緒にいるときにより強くなれる」と述べた。
マッカーシー氏は、他の両党議員も同席した会合の冒頭で、蔡氏を「米国の偉大な友人」と呼び、「米台が経済的自由や民主主義、平和および安定の促進に向け協力する方法を模索できると楽観視している」と述べた。
さらに「米台の人々の友好は自由世界にとって極めて重要な問題だ」とし、「われわれは義務を果たし、全ての米国民が団結している共通の価値観へのコミットメントを改めて表明する」とした。
会談後には、蔡氏と非常に生産的な協議を行ったとした上で、米国は台湾への武器売却を継続し、貿易や技術分野などで経済協力を強化する必要があると述べた。
また、台湾に対する米国の支援は今後も強固で揺るぎないものになると強調した。一方、中国との緊張を高める意図はないとも述べた。
中国外務省の報道官は即座に会談を非難し、米国は「台湾独立」を目指す分離主義者と共謀しており、長期にわたり台湾を巡るコミットに違反していると批判した。
中国国防省も中国人民解放軍がその責任と使命を堅持し、常に厳戒態勢を維持すると表明。米側が台湾問題を巡り、中国に行った政治的約束を順守するよう求めるとした。
中国福建省の海上保安当局は、台湾海峡で特別合同巡回・視察活動を開始した。台湾はこの動きに対し、中国に強く抗議したと明らかにした。
一方、ブリンケン米国務長官はブリュッセルでの記者会見で、蔡氏の訪米は目新しいものではなく、「プライベートかつ非公式」なものとの認識を表明。中国に対し、今回の蔡氏の訪米を「口実にし、緊張を高め、現状を変えることをさらに推し進めるような行動を取るべきではない」と述べた。
中国は、台湾は自国領土の一部であり必要な場合は武力で支配下に置くと宣言しており、この会談に強い反発を示すことは必至とみられる。
ただ、アナリストの中には、中国の反応は昨年のペロシ米下院議長(当時)の訪台時より穏当なものになると予想する向きもある。
カリフォルニアでの会談は、マッカーシー氏がかねて希望していた訪台に比べ、中国の神経を逆なでする可能性は小さいとみられているためだ。