スーダンから退避希望の邦人の脱出完了 72時間の停戦で合意と米発表
戦闘が続くアフリカ北東部スーダンで、日本や欧州、アジア、アラブ諸国の各国政府による自国民の退避に向けた動きが本格化した。写真はジブチで軍用機のそばで並ぶ、スーダンから退避したスペイン人ら。提供写真(2023年 ロイター/Spanish Defence Ministry)
戦闘が続くアフリカ北東部スーダンで24日、日本や欧州、アジア、アラブ諸国の各国政府による自国民の退避に向けた動きが本格化した。15日に始まったスーダン国軍(SAF)と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の戦闘ではこれまでに少なくとも427人が死亡したとみられる。
岸田文雄首相は25日朝、スーダンからの日本人の退避状況に関し、同日未明にかけて大使館関係者を含む在留日本人とその家族計8人がフランスの協力を受けて出国したことを明らかにした。これにより「ハルツーム市内で24日までに退避を希望していた大使館員を含むすべての在留邦人の退避が完了した」と語った。
今後も近隣国のジブチに開設した臨時事務所を通じて、関係各国とも連絡しながら、スーダン国内の日本人の安全確保と必要な支援に全力を挙げて対応していくとした。
岸田首相は24日夜、戦闘が続くスーダンから日本人とその家族45人が自衛隊機によって退避したことを明らかにした。数人の退避希望者がスーダンに残っており、「引き続き関係各国とも緊密に連絡をしつつ、早期の退避に全力を挙げて対応する」と語っていた。
こうした中、国軍とRSFが25日午前0時から72時間の全国的な停戦を実施することで合意。ブリンケン米国務長官が24日発表した。
また、米国は地域、国際社会、スーダンの民間関係者と連携し、恒久的な停戦と人道的な取り決めに関する作業を監督する委員会を設立すると表明した。
RSFは停戦に同意したことを確認した。一方、国軍は今のところ停戦発表についてコメントしていない。
双方はこれまで一時停戦合意を順守しなかった経緯がある。
戦闘が週末に小康状態となったことを機に、各国は自国民の退避を急ぎ、外交官や援助関係者、その家族を乗せた約65台の車列が35時間をかけ、首都ハルツームから紅海に面するポートスーダンに向かった。近隣国ジブチからハルツームに派遣された軍用機によって退避するケースも見られた。
米政府は23日、ハルツームから大使館職員を米軍のヘリコプターで退避させた。
フランス外務省は24日、仏国民196人や36カ国の外国人を含む計491人の避難を手配したと発表。さらなる退避者の受け入れを支援するため、仏軍艦がポートスーダンに向かっていると明らかにした。
ドイツは、空軍4機によって400人超を出国させたと発表。ベアボック外相によると、独国民のほか、ベルギーや英国、オランダ、ヨルダン、米国の国民が含まれるという。
韓国大統領府は、韓国の軍用機によってスーダンから国民28人と複数の日本人が避難したと発表した。
イタリアやスペインも輸送機で自国民を退避させた。インドネシア当局によると、これまでに500人超の自国民が港湾都市に移動し、船でサウジアラビアに退避する計画という。
中国のほか、デンマーク、レバノン、オランダ、スイス、スウェーデンも自国民を避難させたと発表。アラブ湾岸諸国やロシアなども自国民の退避を急いでいる。
また、避難民が隣国に流出する動きも加速しており、これまでに隣国のチャドには約2万人、南スーダンには1万人が避難したという。
グテレス国連事務総長は、スーダンでの暴力が「スーダン国内で破滅的な大惨事を引き起こし、地域全体やそれ以外の地域を巻き込むリスクがある」と警告し、安全保障理事会の15カ国に対し最大限の影響力を発揮するよう呼びかけた。
国連安保理は25日、スーダン情勢を巡る協議を開催する。
戦闘の激化を受け、米国のほか、カナダ、フランス、ポーランド、スイスなどはスーダンの大使館業務を停止。フィンランドのハービスト外相は、西側諸国がスーダンとの外交的な関与を断つことで、ロシアがスーダンでより大きな影響力を持つことになりかねないと警告した。