習近平とプーチンの「兄弟関係」が逆転...兄が頼りの弟分は付き従うのみ
“Big Brother” Xi Meets Putin
ロシアが縮み、孤立を深める一方で、中国の存在感が増しているのは事実だが、今の中国はアメリカを敵に回し、欧州諸国を幻滅させてしまい、おまけに国内経済の見通しは暗い。この状況でアジアの覇者となるためにはロシアを味方につけておく必要がある。
和平案を示す真の理由
今回の首脳会談の最大の議題はウクライナだった。習が用意した和平提案は12項目に及ぶが、泥沼の戦闘に終止符を打つような具体策は皆無だ。中国が超大国としての責任を果たし、平和を愛する国であることを世界に(たとえ口先だけでも)見せつけること。それだけが目的だった。習が和平を提案し、それをロシアが支持すれば、中国には紛争解決能力があると世界にアピールできる。
キーワードは「見せつける」だ。誰に見せつけるのか。まずは、中国にとって第2位の貿易相手でありながらロシアとの友好関係に疑いの目を向けるEUに。次にはロシアとアメリカのどちらにつくでもなく、しかしウクライナ戦争が自国に及ぼす経済的影響を憂えているアジアやアフリカの新興国・途上国にだ。
習の和平案をプーチンが支持したのは、中国にとっての勝利だ。しかし、それで両国が和平に向けて動く気配はない。ロシアは(そしてもちろんウクライナ側も)春から夏にかけて、一段の軍事攻勢をかける構えであり、和平など眼中にない。
そもそも、ロシアが負けたら中国は困る。敗戦による混乱でプーチン政権が崩壊でもすれば、次には別の、もはや中国に頼ろうとしない政権が出現しかねないからだ。
しかし、ロシアの残忍な侵略の共犯者扱いされるのも困る。だから現実にはロシアを(経済的にも軍事的にも)支援しつつ、口先では世界に向けて穏健かつ中立的なメッセージを発信するしかない。
習の訪ロには、ロシアの世界的孤立から漁夫の利を得る狙いもあった。ロシアが欧米による制裁で最も深刻な影響を受けている分野(電子機器、電気通信、機械、自動車など)で、助けてやれるのは中国だけ。その優位性を首脳会談で確認したかった。
中国はまた、ロシア産の化石燃料や食糧などを割安な価格で買えることになった。一方のロシアは、中国の旺盛な需要に頼るしかない。
今回の訪ロで、中国にロシア産天然ガスを運ぶ新たなパイプラインの契約締結に向けた合意ができた。農産物貿易の拡大、北極海航路に関する協力の推進、アフリカやアジア、中南米の国々との貿易における人民元の使用拡大などでも合意が成立した。