プーチンが語り始めた「ロシア崩壊」の脅しは核より怖い?
Russia's Collapse Now Considered Plausible by Putin—Ex-Zelensky Adviser
ナチスドイツの攻撃を受けたスターリングラード(1942年、写真はイメージです) Everett Collection-shutterstock
<11の時差にまたがる広大な領土が政治的な空白地帯になると、キッシンジャーも警告>
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はここ数カ月、前任者のドミトリー・メドベージェフとロシア連邦の崩壊について話し合ってきたと、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の元顧問が語った。
ゼレンスキーの元顧問、オレクシイ・アレストビッチは2月27日、ロシアの弁護士・元反体制派政治家のマルク・フェイギンが運営するYouTubeチャンネル「フェイギン・ライブ」のインタビューで、ウクライナの最新の戦況について聞かれ、ロシアは全面的な敗北も視野に入れていると述べた。
その証拠として挙げたのが、メドベージェフとプーチンの最近の発言だ。現在はロシアの安全保障会議の副議長を務めるメドベージェフは、メッセージアプリのテレグラムで核の脅しをちらつかせ、ウクライナ戦争はNATOとロシアの代理戦争だと主張してきた。
2月27日付のロシアの新聞・イズベスチヤに寄稿した論説で、メドベージェフは旧ソ連の崩壊を古代ローマやオスマントルコの滅亡にたとえ、「大国が滅びれば、戦争が起きる」と述べ、ロシアの崩壊も大混乱を引き起こすと論じた。「帝国が滅びれば、世界の半分がその瓦礫に埋もれることは歴史が証明している......ロシアが存続するかどうかは、前線の決着で決まることではない。人類全体の文明の存続を考えるなら、答えははっきりしている。われわれはロシアなき世界を必要としていない」
崩壊に伴う大混乱に備えが必要
プーチンも26日にロシアの国営テレビで世界の終末を予言するような脅迫じみた発言をした。西側との対決はロシアの国家と国民の存続を懸けた実存的な戦いであり、この戦いではNATOの核戦力を考慮に入れなければならない、と述べたのだ。
「NATOの目的はただ1つ。ソビエト連邦に続き、その主体であるロシア連邦を解体することだ」
ウクライナを支援する西側主要国はウクライナ勝利のシナリオを検討する中で、戦争の結果としてロシア連邦が崩壊する可能性についても意見を交わしてきた。エマニュエル・マクロン仏大統領はプーチンに「屈辱を与えてはならない」と述べ、外交的な解決の余地を残すべきだと主張してきた。最近ではロシアの「敗北は望むが、崩壊は望まない」とも述べている。
ヘンリー・キッシンジャー米元国務長官は昨年12月、英誌スペクテーターに寄せた論説で、「ロシアが解体されるか戦略的政策の遂行能力が破壊されたら、11の時差にまたがる広大な領土が統治の空白状態に陥ることになる」と警鐘を鳴らした。
ウクライナの国家安全保障防衛会議のオレクシー・ダニーロフ長官も最近、西側は依然として停戦に向けた落とし所を決めかねているが、そろそろ世界はロシアの崩壊に備える必要があると警告を発した。