イラク戦争開戦から20年 内戦、IS支配を経てバグダッドに戻った自由な日常
20年前に起こった米軍侵攻前を知らない若者たちは今、社交の場を取り戻し、バグダッドの新たな部分を開拓しようとしている。
イブラヒム・アブデルラーマンさん(26)は、にぎわうバグダッド中心部で大学の友人たちとタバコを吸っていた。約10キロ離れた郊外の街で、閉じ込められたような気分で暮らしてきた彼は、10代最後になって故郷を飛び出した。
バグダッド中心部を動き回るようになるとは「思ってもみなかった」という。
この国はだんだん良くなっている
若者の多くは、2019年にバグダッドで広がった政府への抗議デモを契機に故郷から抜け出した。2003年以来で最大の反政府デモだ。
ハッサン・ファイラさん(23)は「この国を愛してはいなかったが、貧しい地域からデモ参加者が権利を求めて立ち上がった時には、愛を感じた」と語る。「この国を最高のものにしていきたいと願う若者が、まだ、いるのだという気持ちになった」と話す。
政治的、物理的な壁を乗り越える人々が増えたことで、イラク国民はバグダッドに自由が戻りつつあると期待している。
警備員の仕事に就くアリ・サレーさん(38)は、チグリス川を見下ろす公園で4人の子どもが遊ぶ様子をほほ笑みながら眺めていた。
「だんだん良くなっている。楽観しているよ」と彼は語る。
公園に突然、照明が灯り、夕闇からサッカー場が浮かび上がった。
「電気がついた」――。サレーさんの背後に座っていた少年の1人はこう叫ぶと、ボールをトロフィーのように頭に乗せ、仲間を引き連れてピッチに駆け出して行った。
(Nazih Osseiran記者)