最新記事

ロシア

ワグネルへの弾薬提供を拒否?プリゴジンとロシア軍との確執が激化

Wagner Group Likely 'Cut Off' From Russian Artillery Supply: ISW

2023年2月22日(水)16時03分
カイトリン・ルイス

ロシア南部クラスノダールのワグネル兵士の墓。高い死亡率の割に最近は目立った戦果を挙げられていない(1月22日) REUTERS

<プーチンの盟友プリゴジンと彼の率いる民間軍事会社ワグネルの旗色が悪い。侵攻初期のような目立った戦果もなく、ロシア政府・軍部との関係も悪化。>

ロシアの民間軍事会社ワグネル・グループがロシア国防省から武器弾薬の供給を受けられなくなったと訴えていることを、アメリカのシンクタンク戦争研究所(ISW)が報告した。

ワグネルの創設者で、ウラジーミル・プーチン大統領の長年の盟友でもあるエフゲニー・プリゴジンは20日、ロシア軍がワグネルへの弾薬の供給を停止したと語った。その原因は、ロシア政府当局者らとの「複雑な関係」だという。

ISWの見解では、ワグネルとロシア軍との関係が弱まっていることからして、プリゴジンが言う「当局者」とは、ロシア国防省の役人を指している可能性が高い。

「プリゴジンは、ロシア軍当局が彼の要求を無視し、弾薬の調達に関して新たに制限と制約を加えた結果、ワグネルは『完全な弾薬不足』に陥っていると主張している」と、20日のアセスメントでISWは報告している。その結果、ワグネルの傭兵は「死傷者が倍増」する事態に直面しているとプリゴジンは主張しているという。

ロシア国防省はプリゴジンによる刑務所での新兵勧誘を止めさせ、ロシア正規軍のための訓練場をワグネルが使えないようにした。だがプリゴジンによれば、「軍規に違反」して、ワグネルの傭兵集団に今も武器を提供しているロシア軍の士官も一部にはいるという。

失われる影響力

プリゴジンの傭兵部隊はプーチンと友好的な関係を築いてきたが、ウクライナ東部の要衝バフムトへの進攻でどちらの部隊が主導的な役割を果たしたかをめぐって、ロシア軍と衝突。最近ではロシア政府との確執が表面化している。

ワグネルの部隊はロシアのウクライナ侵攻で極めて重要な役割を果たしたが、今は現場での影響力を急速に失っているようにみえる。ISWは以前、激戦が展開されたドネツク州の前線で、プーチンが「疲弊した」ワグネルの部隊とロシア軍の部隊を入れ替えた事例を報告したことがある。

ワグネルはロシア軍と肩を並べて戦った前線で大量の死者を出しており、特にロシアの刑務所から採用された兵士の犠牲が大きかったと伝えられている。英国防省は17日、ワグネルが配備した元受刑者の死傷率は最大50%になりうると報告した。

2月の第2週にワグネルはメッセージアプリ「テレグラム」への投稿で、ロシア国防省がウクライナの前線にいる同社の部隊に「武器、弾薬、必要なものを何も」を期限までに送ってこなかったと主張、「何百人もの」死者が出たのはロシア政府のせいだと訴えた。

その後もプリゴジンはロシア政府を批判する「情報作戦」を続け、18日にはワグネルは(ロシア国防省に)属しておらず『ロシア軍とは何の関係もない』」と主張したとISWは報告した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

スウェーデン、バルト海の通信ケーブル破壊の疑いで捜

ワールド

トランプ減税抜きの予算決議案、米上院が未明に可決

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、2月50.2で変わらず 需要低

ビジネス

英企業、人件費増にらみ雇用削減加速 輸出受注1年ぶ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 9
    ハマス奇襲以来でイスラエルの最も悲痛な日── 拉致さ…
  • 10
    ロシアは既に窮地にある...西側がなぜか「見て見ぬふ…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 8
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 9
    週に75分の「早歩き」で寿命は2年延びる...スーパー…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中