最新記事

大学受験

受験地獄はもう遠い過去......時代は「大学全入」から「大学淘汰」へ

2023年2月22日(水)10時20分
舞田敏彦(教育社会学者)

これは大学全体の話で、有力大学に限ったら競争はまだ激しいのではないか、という疑問があるかもしれない。確かにそうで、「四当五落」(4時間睡眠なら合格、5時間睡眠なら不合格)の紙を貼って勉強に勤しんでいる受験生もいるだろう。しかし今後、少子化がますます進むにつれ、有力大学にも入りやすい時代がくる。

昨年(2022年)の出生数は77万人ほどで、これが2040年の18歳人口となる。この年の大学進学率が60%と仮定すると、大学進学者は46万人。国公立大学と有力私大の入学者数が今と変わらないとすると、どういう事態になるか。<図2>を見てほしい。

data230222-chart02.png

四角形全体を18歳人口(77万人)と見立て、その中において、有力大学入学者数がどれほどのシェアになるかをグラフにしたものだ。大学進学者(46万人)の中でのパーセンテージにすると4割近くにもなり、5人に2人が国公立大ないしは「MARCH」以上の私大に入れる計算だ。その他の私大、とくに入試難易度の低い私大は退場させられている可能性が高い。

2040年の大学進学者数46万人というのは、今の63万5000人と比べて3割近く少ないことになる。進学率が上がれば今のパイを維持することはできる、というのは楽観的に過ぎる。2040年の18歳人口は77万人なので、大学進学者63万5000人を確保するには、同世代ベースの進学率が82.5%にならないといけない。あり得ないことだ。

今後の人口ピラミッドの変化を見越して、社会人のリカレント教育(学び直し)に重点を移すことも必要になる。やせ細る18歳人口を奪い合うことだけに躍起になっている大学は、淘汰されるほかない。

<資料:文科省『学校基本調査』

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

サムスン、第1四半期のAI半導体低迷を警告 米の対

ワールド

ガザ検問所に米退役軍人配置へ、イスラエル・アラブ諸

ワールド

米レーガン空港、ヘリとのニアミス事案頻発 80年代

ビジネス

コマツ、今吉専務が社長就任へ 小川社長は会長に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    「やっぱりかわいい」10年ぶり復帰のキャメロン・デ…
  • 8
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 9
    空港で「もう一人の自分」が目の前を歩いている? …
  • 10
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 5
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中