最新記事

米ロ国境

中ロの領土的野心でアラスカが米本土防衛の最前線に

Alaska Has Become the Front Line for U.S. Global Tensions

2023年2月16日(木)16時18分
ジェームズ・ビッカートン

アラスカ沖上空で撃墜された未確認物体の目的は今のところ分かっていないが、昨年2月24日のウクライナ侵攻開始後、元々はロシアの領土だったアラスカも取り戻すべきだと主張するロシア強硬派の声も聞こえるようになっていた。

昨年7月にはロシアのウラジーミル・プーチン大統領の盟友であるロシア連邦下院議長のビャチェスラフ・ボロージンが、米政府によるロシア高官の資産凍結に対する報復措置として、アラスカを奪還すべきだと主張。さらに今月に入り、ロシアのシンクタンク・中東研究所のエフゲニー・スタノフスキー所長が、ロシアは1815年のウィーン議定書で画定された国境線を回復すべきだと発言し、アラスカ奪還を示唆した。

コートニーによると、これらは一部の極端な強硬派の主張にすぎず、ロシア政府内ではまともに相手にされていない。だが、帝国主義的野望に駆られたプーチン政権が目をつけているのはウクライナだけではないことは確かだ。

警戒強める周辺国

「極端な国家主義者や(帝政ロシアの復活を目指す)失地回復論者の中には、アラスカ奪還を主張する声も聞かれるが、政府上層部には本気でそれを検討したり、実現可能と考える人間はほとんどいない。ただ、そういう主張が時折聞かれるようになったことは、極端な強硬派がプーチン政権内で影響力を拡大し、政権トップに危険な圧力をかけている証拠でもある」

アラスカ奪還は今のところは「バカげた考え」だとしても、ロシア系住民が多く住む地域があるカザフスタンは警戒を強めている。ポーランドやバルト三国、モルドバにとっても、ウクライナの惨状は他人事ではない。

その上アメリカまでアラスカを露中から守る圧力を感じ始めるとすれば、世界のなかの安全な場所はますます少なくなりそうだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独2月小売売上は予想超えも輸入価格が大幅上昇、消費

ビジネス

日産とルノー、株式の持ち合い義務10%に引き下げ

ビジネス

米通商政策で不確実性、利下げに慎重になる必要=イタ

ワールド

タイの倒壊ビル、以前から問題指摘 中国国有企業子会
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 5
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 9
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 10
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 8
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 9
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中