最新記事

中国共産党

習近平は「支配を正当化するための経済発展」すら放棄...突き進む「ソ連化」の道

CHINESE ECONOMY

2023年2月16日(木)17時27分
ティー・クオ、チョンカン・シュイ
中国の習近平国家主席

習近平国家主席(2019年4月) Salma Bashir Motiwala-Shutterstock

<共産党の「完全支配」復活を目指す習近平路線は、民間の活力を奪い、先進国市場を遠ざけ、土地バブルを崩壊させかねない>

中国共産党の第20回党大会(2022年10月開催)では、習近平(シー・チンピン)国家主席が今後5年間も政権を担うことが確認された。ただし、それが中国経済にとって何を意味するかは、3つの要素に左右される。国の制度、過去と現在の経済状況、そして指導者の政治的意図だ。

中国の最も基本的な制度は全体主義であり、経済を含む社会の全領域に共産党の独占的支配が及んでいる。全体主義型統制を支える党=国家の制度は、1949年にソビエト連邦から全面的に移植されたものだ。

ソ連型全体主義は30年前に経済の行き詰まりにより崩壊したが、中国は例外に見えた。いま問われているのは、中国独自の全体主義的実験が今後も長続きするかどうかだ。

この問いに答えるためには、「中国の特色ある全体主義」の構造を理解する必要がある。その重要な柱は政治・思想・人事における高度に中央集権化された全体主義型統制と、行政・経済政策の分権化を合体させた地域分権全体主義(RDT)だ。

この組み合わせはポスト毛沢東時代の改革開放政策の原動力だった。この時期に経済への中央集権的・全体主義的な統制は緩和され、RDTは地域分権権威主義(RDA)へと発展した。だが、習が権力を握った2012年以降は全体主義に回帰し、特に急成長する民間部門への統制を再び強めた。この逆流現象が、22年の急激な経済減速の主な理由だ。

毛の死後、共産党指導部は経済成長こそ生き残りの鍵だと考え、RDTを新たな改革開放政策の制度的基盤に据えた。この新モデルでは、地域経済の状況が地方の党=国家官僚の昇進を左右するため、一部の官僚は民間企業の違法行為を隠蔽したり、そうした企業を支援したりして、民間部門の急成長を促した。

民間企業の存在感が増すと、共産党は憲法を改正し、私有財産権を認める世界初の共産主義国家となった。この時点で統制はある程度緩和され、RDTはRDAに移行し始めた。

RDAモデルでは、共産党の政治面での独占に歯向かわない限り、民間部門や萌芽期の市民社会、非国営マスメディアの成長が許容されていた。加えて01年のWTO(世界貿易機関)加盟を機に外国から巨額の投資が流入し、輸出が飛躍的に伸びた。

だがRDAは、より長期的な問題の根本原因でもある。中国経済の持続的エネルギーは、土地と銀行部門の国家による独占、司法の独立性欠如、民間部門に対する差別、内需不足によって常に脅かされている。08年の世界金融危機は、党による完全支配を再び推進する口実となった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米インフレ、目標上回る水準で停滞も FRB当局者が

ビジネス

再送-米マイクロソフトがXbox開発スタジオを一部

ビジネス

介入の有無、予見を与えるため発言控える=鈴木財務相

ワールド

バイデン氏、大学卒業式の平和的抗議を歓迎
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 5

    デモを強制排除した米名門コロンビア大学の無分別...…

  • 6

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    中国軍機がオーストラリア軍ヘリを妨害 豪国防相「…

  • 10

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中