「昔のソビエト赤軍と変わらない...」さすがに「30万人」は大げさでもロシア軍を侮れない理由
The Coming Fight in the East
2023年2月5日、ウクライナ・ドネツク州のバフムート付近で、ウクライナ軍がドイツの「パンツァーハウビッツェ2000」を発射 Marko Djurica-REUTERS
<訓練も装備も劣るが、どんなに激しい砲火を浴びてもじわじわ前進し、ひたすら人海戦術で粘り勝ちを狙う。ロシアの狙いは、西側の兵器が到着前に占領地を拡大すること>
いよいよロシアの熊が押し寄せてきた。既に数十万の大軍がウクライナ東部のドンバス地方に集結している。圧倒的な砲弾の数と人海戦術で、ウクライナ側の防衛網を突破する構えだ。
前線では戦闘が激化している。昨年2月24日の侵攻開始から1年、大方の予想どおり、ロシア軍は今度こそ総力で東部を攻めてくるようだ。
「あの国の東部では何かが始まっている」と言ったのはエストニア外務省のヨナタン・フセビオブ次官。「とんでもない数のロシア兵が、前線に集まっている」
昨年9月に事実上の総動員が始まって以来、既にウクライナ領内に30万を超えるロシア兵が送り込まれたと、ウクライナ当局は見積もっている。
さすがに「30万」は大げさだとしても、1年前の侵攻開始時点より多く、しかも(あえて首都キーウ〔キエフ〕を狙わず)東部戦線に戦力を集中しているのは間違いない。
「10日以内に、(ロシア軍の)新たな大規模侵攻が始まるだろう」
ウクライナ軍の当局者は匿名を条件に、そう語った。ちなみにウクライナ国防相のオレクシー・レズニコフ(当時)も、侵攻開始1年の節目に総攻撃が始まるとの見通しを示していた。
キーウの制圧を狙った初期の作戦で、ロシア軍は大きな損失を出した。そこでロシア政府は昨秋、「部分的動員令」を発して約30万の新兵をかき集めた。徴兵を嫌って国外へ脱出する人もいた。まともに新兵を訓練する時間もなかった。それでも銃を持たせ、ともかく前線へ送り込んだ。
それでどうにか、ウクライナ側の反転攻勢を食い止めた。ただしロシア側も壊滅的な打撃を被った。欧米の軍事筋による推定ではロシア軍の死傷者は20万人に迫っていると、米ニューヨーク・タイムズ紙は報じた。