最新記事

ロシア

プリゴジンは用済みなのに気づかないだけ、これからは正規軍が主役に──ISW分析

Wagner Group Chief Overestimating His Importance to Russia: ISW

2023年1月30日(月)18時10分
エリー・クック

刑務所で新兵を募って悪名を馳せたプリゴジン。写真はFBIの手配書より FBI/REUTERS

<戦場での功績を強調し、存在感をアピールする民間軍事会社ワグネルの創設者プリゴジンだが、国内での批判と体制を立て直した正規軍の前に、その役割は終ろうとしている?>

悪名高いロシアの民間軍事会社ワグネル・グループを創設した金融業者エフゲニー・プリゴジンは、ロシアの指導部における自分の重要性を「過大評価」している、とアメリカのシンクタンク戦争研究所(ISW)が評価した。

プリゴジンと彼が率いるワグネルの部隊は、ロシアの対ウクライナ軍事作戦に大きく関与している。1月初め、ロシア軍ではなくワグネルの戦闘員が、激戦が繰り広げられたウクライナ東部ドネツク州の町ソレダルを制圧したと発表したのはプリゴジンだった。

ロシア軍は近隣のバフムトの攻略に力を注いでおり、ソレダルの戦闘で元受刑者などを戦場に投入して疲弊したワグネルのあとを正規軍部隊が引き継ごうとしていると、アメリカのシンクタンク戦争研究所は指摘した。

弱体化したワグネルの部隊は、2週間ほどこの地域で大きな成果をあげることができず、ロシア軍兵士がワグネルの戦闘員に取って代わるにつれて、プリゴジンはロシア政府内における影響力を失いつつある、という。

2022年夏には、ワグネルの部隊は実際にある程度ロシア軍の代わりを務めていた。そのため「プリゴジンは誤解して、ロシアの軍事・政治領域における自分の重要性を過大評価した」と戦争研究所は指摘する。

だが、ロシア軍がバフムトをめぐる作戦でより重要な役割を果たし、ワグネルの新兵にそれほど依存しなくなれば、ロシア政府にはもはや「プリゴジンのご機嫌を取る必要はなくなる」。

ゲラシモフのトップ就任がサイン

ロシア国防省とウクライナ駐留ロシア軍トップに就任したワレリー・ゲラシモフ参謀総長が「軍のプロ化」をめざしていることも、プリゴジンの影響力低下の原因になった。

ゲラシモフが1月に総司令官に昇進したことについて、戦争研究所はロシア政府が再び正規軍に軸足を置いたことを示している、と分析した。

少なくとも2022年5月以降、ロシア軍の退役軍人らは、傭兵や非正規軍の使用に疑問を抱き、ウクライナでの作戦のやり方を変えるよう求めていたと、戦争研究所は指摘した。

プリゴジンは変革を求める著名人らの意見を頼みにし、退役軍人を口汚く攻撃してきた。規律がなく残虐な自分たちを隅に追いやり、正規軍を再生しようとする退役軍人たちの動きを察知したプリゴジンが、劣勢を挽回するために過剰反応している証左だと、戦争研究所は見ている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中