最新記事

ロシア

ロシアのハッカー集団「コールドリバー」、アメリカの3つの原子力研究施設を標的に

2023年1月24日(火)20時25分
青葉やまと

ロシアのハッカーがアメリカの原子力研究施設への侵入を試みていたことがわかった Youtube-FOX4 News Kansas City

<ロシア政府の諜報活動、コールド・リバーと呼ばれるハッカー集団がサポートしている。セキュリティ研究家は、「最も重要なハッキング集団」だと警告する>

ロシアのハッカー集団が昨夏、アメリカの3つの原子力研究施設を標的とし侵入を試みていたことが判明した。ウクライナのザポリージャ原発がロシア軍に占拠され、重大な事故が懸念されているさなかのサイバー攻撃だった。

ロイターは、同社がサイバーセキュリティの専門家ら5人と実施した共同調査において、コードネーム「Cold River(コールド・リバー)」と呼ばれるロシアのハッカー集団がアメリカの原子力施設をターゲットとしていたことが判明したと報じている。

インターネット上に残された痕跡から、カリフォルニア州のローレンス・リバモア国立研究所など3つの施設が標的となったことが判明したという。

同研究所は1950年代に核兵器の研究施設として設置され、その他科学技術を含めた研究を行ってきた。昨年12年には保有する世界最大のレーザー核融合施設であるNIFにおいて、核融合で世界で初めてプラスのエネルギー収支を得ることに成功している。

ほか、ニューヨークのブルックヘブン国立研究所、およびイリノイ州のアルゴンヌ国立研究所が攻撃対象となった。

典型的なフィッシング攻撃で偽ページに誘導

ハッキングの手法は、原始的なフィッシング攻撃であった。コールド・リバーはネット上に偽のログインページを作成し、原子力研究に携わる科学者たちにメールを送信することで同ページへ誘導しようとした。

科学者たちがメールに記載されたURLを開くと、見慣れたログインページによく似た偽のページが用意されているという手法だ。偽のページだと気づかずにIDとパスワードを入力してしまうと、入力内容はコールド・リバーに送信され抜き取られる。コールド・リバーはこうして入手したログイン情報をもとに、当該の研究者になりすまし、本来のシステムにログインすることが可能となる。

ロイターは実際に不正なログインが発生したかを対象となった3つの研究機関に問い合わせたが、各機関は回答を控えた。

英外務省やMI6からもデータを盗んでいた

コールド・リバーは2016年、イギリス外務省を標的としたハッキング攻撃を実施し、その名がセキュリティ研究者のあいだで知られるようになった。

米サイバーセキュリティ企業クラウド・ストライクの情報部門担当上級副社長であるアダム・マイヤーズ 氏は、英ガーディアン紙に対し、「名前を耳にしたことはないでしょうが、これは最も重要なハッキング集団のひとつです」と説明している。「ロシア政府の諜報活動に対する直接的なサポートに関与しているのです」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:保護政策で生産力と競争力低下、ブラジル自

ワールド

焦点:アサド氏逃亡劇の内幕、現金や機密情報を秘密裏

ワールド

米、クリミアのロシア領認定の用意 ウクライナ和平で

ワールド

トランプ氏、ウクライナ和平仲介撤退の可能性明言 進
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 2
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はどこ? ついに首位交代!
  • 3
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 4
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 5
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 6
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 7
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 8
    300マイル走破で足がこうなる...ウルトラランナーの…
  • 9
    今のアメリカは「文革期の中国」と同じ...中国人すら…
  • 10
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 4
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中