南部州からNYにバス移送された不法移民は今どうなった?
Migrants Refuse to Leave NYC Hotel, Denounce Being Treated Like 'Dogs'
1カ月半過ごしたマンハッタンのワトソンホテルを追い出され、外で野宿する不法移民たち(1月30日) Eduardo Munoz-REUTERS
<南部州から大量に移送されてきた不法移民は、リベラルなニューヨークでどんな暮らしをしているのか。思ったより悪くないとも思えるが、「俺たちは犬じゃない」と怒っている>
ベネズエラ人のアイザック・カスティリャーノ(21)は2022年8月に米南部の国境を越えてアメリカに入国。10月からニューヨーク市に滞在し、12月からはマンハッタンにあるワトソンホテルで暮らしてきた――今週までは。
1月29日、外出先から戻ってみると、カスティリャーノは1カ月半滞在したホテルから突然、締め出された。ニューヨーク市が、不法移民のうち独身男性をブルックリンにあるクルーズ・ターミナルに設置したテント村に移し、ワトソンホテルには子連れの家族を滞在させることにしたためだ。
カスティリャーノはその日のうちにバスでテント村に向かったが、施設を一度ぐるりと見た後、マンハッタンに戻ることにした。市が用意した「新しい家」の状況について、仲間の移民たちに警告しなければと思ったためだ。
彼をはじめ、ほかにも「引っ越し」を求められた不法移民たちは、ホテルの部屋にはもう入れないため野宿をすることにした。1月31日午後の時点で、彼らはまだ57丁目の路上に設置したテントの中で、ホテルに戻る許可が下りるのを待っていた。
「ワトソンホテルのような、もっと安定した場所に滞在できるという約束だった」と彼は本誌に述べ、さらにこう続けた。「騙された気分だ」
国の問題なのに都市に負担が
ニューヨーク市当局によれば、過去1年で推定4万3000人を超える不法移民が、南部の州からバスでニューヨークに移送されてきている。ジョー・バイデン米政権に、南部国境地帯の問題に対処するよう圧力をかけるために始められたこの「移送」が、ニューヨークの資源を圧迫し、多くの不法移民を混乱に陥れている。
ニューヨークのエリック・アダムズ市長は、バイデンに連邦政府の助けを求めてきた。バイデンは31日に、看板政策のインフラ投資法をアピールする遊説のために、ニューヨークを訪れる予定だ。
アダムズは、「国家の問題」についてニューヨークのような都市が負担を強いられているのは不公平だと主張する。テキサス州など南部の複数の州の知事は、大量の移民が不法に越境してくる問題に注目を集めるため、バイデンが大統領に就任した2年前から、移民をバスに乗せて北部の州に移送してきた。
政府は不法移民の問題に対処するための長期計画を模索しているが、アダムズは「必要なのは短期計画だ」と言う。
1月25日にMSNBCの人気番組「モーニング・ジョー」に出演したアダムズは、次のように語った。「自分の家が燃えている時に、防火対策についての議論なんて聞きたくはない。私は火を消して欲しいのだ。いま起きている火事は、国内の複数の都市に不法移民や難民希望者が集中しすぎているという問題だ」