最新記事

塹壕戦

ウクライナ兵をこれ以上「バフムトの肉挽き器」で無駄死にさせるな

Ukraine needs "another solution" to win Bakhmut "meat grinder": Politician

2022年12月20日(火)20時01分
ニック・モドワネック

ウクライナ兵は気力で戦っている(ドネツク地方のバフムトの陣地で休むウクライナ兵、12月9日) Yevhen Titov-REUTERS

<勇敢なウクライナ兵ももう限界? 東部の激戦地バフムトでの塹壕戦が長引くにつれ、兵員より武器を重視する声が高まっている>

ロシアによるウクライナ侵攻で、ウクライナ東部ドネツク州の要衝都市バフムトをめぐる攻防が激しさを増すなか、ウクライナのあるNGO(非政府組織)の代表が、ロシア軍に勝つために必要なのは兵士の増員ではないという考えを示した。

ウクライナのNGO「オープン・ポリシー・ファンデーション」の共同創設者であるイホール・ジダーノフは、ウクライナの英字紙キーウ・ポストに寄稿した論説の中で、ロシアの傭兵組織「ワグネル・グループ」の創設者エフゲニー・プリゴジンらが、現在の戦況を「バフムトの肉挽き器」と表現していると述べた。

「肉挽き器」とは、第一次大戦の際にフランスのヴェルダンで繰り広げられた、10カ月に及ぶ戦いで行われた猛烈な砲撃による大量殺戮を表す言葉だ。互いに塹壕を掘り、敵陣を殲滅するまで砲撃を浴びせるので塹壕戦ともいう。だからジダーノフは、バフムトにはこれ以上兵力を割くのではなく「別の解決策」を考えるべきだと訴えた。

プーチンはまだまだ攻勢をかけてくる

米ミシガン大学フォード公共政策大学院で研究・政策関与学部の副学部長を務めるジョン・シオルシアーリも本誌に対し、「(ウクライナでの)戦争は長引き、過酷な段階にある」と述べた。「プーチンは、国民を納得させられるような勝利を必要としている。だがバフムトでの破壊行為は逆効果になるだろう。ウクライナを支援しなければロシアを増長させると、西側諸国に改めて思い起こさせることになるからだ」

ジダーノフは、英誌エコノミストがウクライナ軍のワレリー・ザルジニー総司令官に行ったインタビューに言及した。ザルジニーはその中で、「前線を死守することが何よりも重要だ」と語った。「領土を奪い返すことは、奪われることより10倍も15倍も難しいからだ」

さらに、ロシア軍は2月に「さらなる部隊や予備役を動員して戦争を仕掛けてくる」との見方を示し、それに備えるべきだとも語った。早ければ1月末、遅くとも3月には、ロシアが東部ドンバス地方ではなく、ウクライナの首都キーウか隣国ベラルーシ方面から大規模な攻撃を仕掛けてくる可能性があると述べた。

「ウクライナ軍の部隊はいずれも、いま起きている戦闘で手一杯だ。彼らは血を流している」とザルジニーは述べた。「彼らは勇気と気力と司令官の能力だけを頼りに戦っている」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

テスラ、第1四半期売上高が予想下回る マスク氏「経

ワールド

米国務省を再編、国益にならない部署廃止へ トランプ

ワールド

米CBS看板報道番組プロデューサーが辞任へ、トラン

ビジネス

オープンAIのアルトマン氏、オクロ会長を退任 両社
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 2
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 3
    パウエルFRB議長解任までやったとしてもトランプの「利下げ」は悪手で逆効果
  • 4
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 5
    アメリカは「極悪非道の泥棒国家」と大炎上...トラン…
  • 6
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 7
    日本の人口減少「衝撃の実態」...データは何を語る?
  • 8
    コロナ「武漢研究所説」強調する米政府の新サイト立…
  • 9
    なぜ世界中の人が「日本アニメ」にハマるのか?...鬼…
  • 10
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 5
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 6
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 7
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 8
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 9
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 10
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 8
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 9
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中